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〈4〉 支えられて 赤嶺 広美(南風原町女性連合会)


〈4〉 支えられて 赤嶺 広美(南風原町女性連合会) 琉球新報社長賞・赤嶺広美
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 私は今年、還暦を迎えました。これを機に、これまでの自分の人生を振り返ってみることにしました。幼少期からこれまでその都度、体験や学びを通して人生の節目を乗り越え、歩んできました。ただ、忘れてならないのは家族や周りのたくさんの方々に助けられ、支えられてきたおかげだということを。
 私には特に辛い思いをした出来事がありました。その時に私を支えてくれた皆さんに、改めて感謝の気持ちをお伝えするためにお話ししたいと思います。
 私は25歳で結婚し、28歳の時に第一子となる長男を出産しました。私は生きてきた中で一番の喜びとうれしさに満ちあふれ、この上ない大きな幸せに包まれていました。しかし、それが一転しました。ある日、息子に風邪の症状が見られ病院を受診したところ、心臓に重い疾患があることが分かりました。その2日後、息子はこの世を去ってしまいました。わずか3カ月の短い命でした。あまりにも突然に無情にもその現実と向き合うこととなりました。私と夫は本当につらかった。信じられなかった。深い悲しみのどん底に突き落とされてしまいました。
 そんな時、両親や兄、義母や兄姉たち皆が共に悲しみを分かち合い、慰めてくれ、支えてくれました。友人たちにも心配をかけてしまいました。私と夫は周りの皆さんのおかげと、時の流れも手伝って、どうにか日常を取り戻せるまでになりました。しかし、息子を失った悲しみは、どんなことがあっても消えることはありません。
 それから2年ほどして、私たち夫婦はまた新しい命を授かることができ、次男が誕生しました。大きな喜びと希望の光でした。ところが、喜びもつかの間、生まれてきた息子に、またもや深刻な病気があることを宣告されました。医者から「予後がないです」と言われました。その意味を聞き返すと「長くは生きられないんです」と。後で分かったのですが、この病気は1年ほどしか生きることができないという残酷な事実があることを知りました。
 しかし、私と夫は精いっぱい息子をいとおしみ、大切に見守り続けました。息子が1歳を過ぎた頃だったでしょうか、主治医の先生から「お母さん、奇跡だね」と驚かれるほど息子は一生懸命頑張って生きてくれました。私たちに希望を持たせてくれ、かけがえのない恵みの子です。時折見せてくれる息子の笑顔は本当にかわいかったです。
 息子は、通院はもちろん、幾度となく入退院を繰り返していました。息子が2歳と4歳になった頃には2人の弟が誕生していたので、私たちは私の実家でお世話になり、2人の弟の面倒を両親にも手伝って見てもらっていました。入院中は毎日、夫は仕事帰りに息子を心配して病院に来てくれました。私の夕食の弁当を届けるのも夫の役目でした。息子の1日の様子を話すわずかな時間も私が安心してほっとする貴重な時間でした。長期の入院中は夫も大変だったと思います。夫は私を支えてくれる信頼の厚い大切な存在です。
 また、夫の姉も息子の入院を聞く度に、すぐに病院に駆けつけてくれ、夜遅くまで私たちと一緒に息子に付き添ってくれました。姉は自分のことより息子と私たちのことを心配し、寄り添ってくれるとても心の温かい人で、そんな姉にいつも励まされ、勇気づけられ、支えられていました。思いを共有し、心強く感じる存在でした。
 義母は毎週のようにお見舞いに来てくれました。ある日、義母は私への昼食にとわざわざレストランに立ち寄り、昼食にするにはもったいないほどの豪華な食事を弁当にして届けてくれました。義母は高齢にもかかわらず1人でタクシーに乗って。本当に頭の下がる思いでした。義母の温かい心遣いがうれしかったです。孫の心配をしながら、嫁の私のことまで心配してくれていました。義母との会話は楽しく、うれしい時間でした。私の自慢の義母でもあります。義母からは数えきれないほどたくさんのご恩を頂き、心から感謝の気持ちでいっぱいです。
 いつもの入院だと思っていたある日、息子はとうとう逝ってしまいました。5歳3カ月の生涯でした。小さな体で3度の手術、苦しい発作や治療にも耐え、一生懸命頑張ってくれました。どんなにか痛かっただろう、つらかっただろう。息子の気持ちを思うと心が痛みます。涙があふれてきます。私がもっと息子のことを気遣ってあげられたのではないかとの悔いが今でも残っています。
 あれから25年。過去のつらい出来事は決して忘れられるものではありません。しかし、私はまた、前を向いて歩みました。亡くなった2人の息子の姿は見えないけれど、私の心の中でずっと生きています。亡くなった2人の息子も、いつまでも悲嘆にくれ、とどまり続けることを望んではいないでしょう。後から生まれた2人の小さな息子がそばにいる。夫がいる。私を支えてくれるたくさんの人たちもいてくれました。
 次男を亡くした後、また2人の息子に恵まれ、私は六男の母になりました。3人は既に社会人に、六男は高校生。4人とも健康でたくましく育ってくれました。うれしい。私は今、幸せを感じています。これも、私を支えてくれた皆さんのおかげだと感謝しています。
 また、地域とのつながりの中でも、自分が支えられ、潤いのある生活ができていると思います。特に女性会での関わりは大きいです。会活動を通して多くの皆さんと知り合い、交流を深め、楽しく活動しています。そしてお互いに助け合い、支え合いながら、共に活動する中で、強い絆も生まれてきました。
 支えられてきたおかげで今の自分がいます。人は1人では生きていけないことを実感します。私を支えてくれた皆さまに、心から感謝しています。