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<島人の目>二宮尊徳に学ぶ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 実業家・稲盛和夫さんの著書「生き方」では、再三にわたって二宮尊徳に学べとある。尊徳は江戸時代後期の農政家・思想家。比較的裕福な農家に生まれたため、教育にも恵まれて育つ。しかし、異常天候による川の氾濫で家の田畑が荒廃してしまい、復旧のため借金を抱えた。若くして働くことになったが、尊徳は勉強を欠かさなかった。

 両親が亡くなる悲劇に見舞われながらも地道な努力を重ね、財政や農村再建の専門家としても名をあげた。尊徳の名前は二宮金次郎としても広く知られる。二宮金次郎の像がまきを背負って本を読む姿が示すように、勤勉な模範として象徴される。

 尊徳の体験とは程遠いが自分にも似たようなエピソードがある。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていた頃、ここアメリカ・ロサンゼルスも例外ではなく多くの人々が職を失い、死亡した。それでも私は、さまざまな分野で世界をリードする国「アメリカ」を信じた。予防接種を夫婦共に7回受け、庭師の仕事をせっせと継続して、アメリカ人の信頼を勝ち取っていった。

 私が生まれ育った本部町の新里は小さな農村だったが、四男の直一夫婦と次男家族で懸命に努力を続けたことで豊かな土地へと開拓していった。ある意味で二宮金次郎の精神にかなうものがあるような気がして、「弟よ、ありがとう。家族ともども幸せに!」と感謝の言葉を伝えた。

 自分のことをいえば、先のコロナ禍の中で普段の2倍働いた。少し貯金も増え、幸せな家庭を築くことができている。

 (当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)