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ハマス加勢へ攻撃開始 民兵組織、背後にイラン ガザ危機 紅海 イラク 援護射撃


ハマス加勢へ攻撃開始 民兵組織、背後にイラン ガザ危機 紅海 イラク 援護射撃 パレスチナ自治区ガザで空爆後に負傷者を搬送する人たち=21日(AP=共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘で、イエメンやイラクなど中東各国の親イラン民兵組織がイスラエル陣営への攻撃を始めた。米軍が紅海でミサイルを迎撃するなど、世界屈指の油田地帯がきな臭くなっている。ハマスに加勢し、イスラエルをけん制する狙いがあり、背後にはイスラエルを敵視するイランの影がちらつく。 (1面に関連)
 産油国サウジアラビアからの石油タンカーが行き交う紅海。19日、米軍ミサイル駆逐艦カーニーが「9時間にわたり」(米CNNテレビ)、上空を飛ぶ巡航ミサイルや無人機を次々迎撃した。当局者は「ミサイルがイスラエルに向かっていたのは間違いない」と断言する。
 発射が疑われるのはイエメンの親イラン武装組織フーシ派だ。反米組織で、スローガンに「イスラエルの死」を掲げる。イスラエルから約2千キロ離れたイエメンでも、パレスチナ人に連帯し、イスラエルに抗議するデモが起きていた。
 フーシ派はイランの支援を受け、無人機や弾道ミサイルを保有。2019年にイランと中東の覇権を争うサウジの国営石油が無人機攻撃を受けた際、犯行声明を出した。
 「イラクの抵抗戦線が米軍基地を無人機で攻撃」。国営イラン通信は21日、無人機が勢いよく飛び立つ動画をX(旧ツイッター)で公開した。19日にはイラクで駐留米軍が無人機やロケット弾で攻撃された。イスラエルを支える米国に対し中東ではガザ攻撃の責任を問う声が多い。イラクでは過去数年、親イラン民兵による駐留米軍への攻撃が続いていた。今回の戦闘で反米攻撃が再活性化した形だ。イスラエルの北隣レバノンにはイスラム教シーア派組織ヒズボラがあり、ガザ危機と並行してイスラエルと交戦。イランのアブドラヒアン外相は国営テレビで、民兵組織の指導者らが「紛争に入る準備ができている」と語ったと述べた。
 一連の動きは、イスラエルの戦力分散を狙った脅しにとどまるとの見方もある。外交筋は米イスラエル側からの報復攻撃を「イランは恐れている」と指摘。情報筋は、イランが親イラン組織に戦線を広げないよう求めたと明らかにした上で「イランの政策は(国内の政情を不安定にしないために)中東の緊張拡大を回避すること。最優先事項はこの戦争を止めることだ」と説明した。
 ただ、イスラエルがガザ地上侵攻に踏み切れば、ガザ側の被害が拡大するのは必至。親イラン組織はさらに激しい攻撃でハマスを「援護射撃」するとみられている。(テヘラン共同=渡会五月)
18日、パレスチナ自治区ガザの病院爆発を受け、イスラエル軍による攻撃だとして抗議する人々=イエメン・サヌア(ゲッティ=共同)
パレスチナ自治区ガザで空爆後に負傷者を搬送する人たち=21日(AP=共同)