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習指導体制ほころび 国防相解任 正当性に疑問符も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【北京共同=杉田正史】中国の習近平指導部が異例の3期目に突入して1年で、外交・安全保障を担う重要閣僚が説明のないまま相次ぎ解任される異常事態が起きた。習国家主席は政敵を排除し周囲をイエスマンで固めたが早くもほころびが出た形。景気回復が見通せず、国際環境も厳しさを増す中で、目立つのは身内の引き締めばかり。長期支配の正当性に疑問符が付きかねない。
  (3面に関連)
 「李尚福氏の国務委員、国防相の職務を解く」。中国国営中央テレビのアナウンサーは24日夜、党・政府の重大決定を淡々と読み上げた。
 秦剛前外相の解任から約1週間後の7月末、習氏が進めた軍組織改革で創設したロケット軍幹部の交代が突然発表された。軍を巡っては夏ごろから別の幹部らの不審死や収賄など不穏な臆測が飛び交った。解任が決まった李前国防相については軍需産業に絡む汚職に関与したとの情報がある。中国筋によると、李前国防相に近い軍や企業の関係者は次々と捜査対象となり、外堀が埋められていたという。
 「幹部が利益団体の代弁者となるのを断固として防ぐ」。習氏は1月の共産党の会議で党内の腐敗が依然として深刻だと指摘し「引き続き圧力をかけていく」とにらみを利かせた。
 2012年の党総書記就任以来、反腐敗闘争で政敵を排除しながら権力基盤を固めた習氏は昨年10月の第20回党大会で悲願の3期目入りを果たした。
 引き締めを緩めれば反動で地位が脅かされるとの危機感から「闘争をやめるわけにはいかない」(習氏)。党・政府幹部の摘発が今も続いており、李前国防相をはじめとする軍の疑惑の背景には「自身の統治を揺るがしかねない」(体制内改革派)と習氏が疑心を抱いたとの見方もある。
 国内で経済成長が鈍る中、習氏は、米国に迫る国際的地位の向上を権力の源泉にしようと積極的な外交を展開。3月にはイランとサウジアラビアの仲介を担い、国交正常化の立役者になった。
 だが習氏が一本釣りしてスピード出世を果たした秦前外相は突然表舞台から消え、外交スケジュールに狂いが生じた。