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ロがCTBT撤回へ 上院可決、核実験再開も


ロがCTBT撤回へ 上院可決、核実験再開も CTBTの批准撤回法案を可決したロシア上院の議場=25日、モスクワ(ロシア連邦院提供・AP=共同)
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CTBTの批准撤回法案を可決したロシア上院の議場=25日、モスクワ(ロシア連邦院提供・AP=共同)
 ロシア上院は25日の本会議で、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する法案を全会一致で可決した。タス通信が報じた。プーチン大統領の署名による発効は確実。ロシアは核実験再開が可能になり、ウクライナ侵攻に伴う米ロの対立で悪化した核軍縮を巡る国際的環境の一層の後退が避けられない見通しとなった。
 プーチン氏は今月5日の国際討論フォーラムでCTBTの「批准撤回は可能だ」と言及。ロシア下院は同18日、批准撤回の法案を可決していた。
 あらゆる核実験を行わないよう義務付けるCTBTは1996年9月の国連総会で採択された。ソ連時代末期の91年秋に核実験の一時停止を宣言したロシアはCTBTに署名、2000年5月に大統領就任直後のプーチン氏が上下両院を通過した関連法に署名して批准手続きを終えた。核兵器を持つ国連安全保障理事会常任理事国のうち英国とフランスも批准したが、米国と中国は批准しておらず、条約は発効していない。
 ロシアのマトビエンコ上院議長は25日の審議で、米国が批准しないなら「条約は飾り物に過ぎない」と指摘した。
 プーチン氏は今年2月の年次報告演説で「米国が新型核弾頭の開発を行っているとの情報がある」と指摘、核実験再開の準備を整えるよう国防省などに指示する考えを示した。ロシアが先に核実験を行うことはないとする一方で「米国が実施すればわれわれも行う」と述べ、核戦力の均衡を保つ措置だと主張した。
 ロシアは米国との新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止。米国が欧州諸国に戦術核兵器を配備していることに対抗してベラルーシ領内に戦術核を配備するなど、核兵器による欧米へのけん制を強めている。