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慰安婦学術本 有罪破棄 韓国最高裁 名誉毀損に該当せず


慰安婦学術本 有罪破棄 韓国最高裁 名誉毀損に該当せず 26日、ソウルの韓国最高裁で、判決後に記者団の取材に応じる朴裕河・世宗大名誉教授
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 【ソウル共同】韓国最高裁は26日、旧日本軍の従軍慰安婦問題を扱った著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損(きそん)罪に問われた朴裕河・世宗大名誉教授(66)の上告審判決で、罰金1千万ウォン(約110万円)とした二審判決を破棄し、審理をソウル高裁に差し戻した。記述内容は「学問的な主張」に当たると判断し、「無罪の趣旨」とした。
 事実上の逆転無罪判決で、韓国内で日韓間の歴史問題に関する自由な学術的議論が萎縮する恐れは払拭されそうだ。
 朴氏は著書で、慰安婦問題を帝国主義下での女性の人権問題と指摘した一方、当時の慰安婦と日本軍は「同志的関係」にもあったなどと表現。元慰安婦らは名誉毀損に当たるとして2014年に刑事告訴し、検察が在宅起訴した。
 最高裁判決は、慰安婦問題の背景には家父長制など社会構造的な問題があり、日本の責任ばかりに注目して日韓の対立を深めては、問題解決は難しいとの認識があったと朴氏の執筆意図をくみ取った。
 当時の慰安婦が積極的に日本軍に協力したと主張するための表現があったとはみられないとし、虚偽の記述があったとした二審判決を否定。表現の自由は「学門の自由の根幹」だと指摘し「学問的表現の自由への制限は必要最小限にとどめなければならない」とした。
 朴氏は判決後、著書を巡り多くの誤解を受けたと話し「正しい判決を下してくれて感謝する」と述べた。
26日、ソウルの韓国最高裁で、判決後に記者団の取材に応じる朴裕河・世宗大名誉教授