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泥沼懸念、米対応後退 ガザ情勢 イスラエル寄り批判拡大 焦り 不満


泥沼懸念、米対応後退 ガザ情勢 イスラエル寄り批判拡大 焦り 不満 米国のイスラエル対応の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 パレスチナ自治区ガザ情勢を巡り、バイデン米政権の軌道修正が鮮明になっている。当初はイスラエルの大規模な軍事作戦を全面支持していたが、戦闘の泥沼化や民間人被害への懸念が米国内で広がるにつれて立場は後退、抑制を求めて説得に躍起だ。政権の支持基盤のリベラル派からはイスラエル寄りの姿勢への批判が強まり、大統領選を来年控える中で難しい対応を迫られている。 (1面に関連)
 「米国なら迅速で圧倒的な対応を取る」。イスラム組織ハマスによる7日の奇襲攻撃の数日後、バイデン大統領はネタニヤフ首相との電話で、報復を誓うイスラエルの立場に理解を示した。米国では奇襲を2001年の米中枢同時テロと重ね、同情する向きもある。
 米側では当初、ハマスを支援するイランや親イラン派組織が混乱に乗じて増長することを食い止めるためにも、イスラエルによる大規模な軍事措置は不可欠だとの見方が多かった。
 ハマスが実効支配するガザへの本格的な地上侵攻に「お墨付き」を得たと自信を深めたネタニヤフ氏は、作戦の準備を加速させた。
 だが、イスラエル側から細部や終了時期が不明な作戦内容の説明を受けるにつれ、バイデン政権内で、地上侵攻が「終わりのない泥沼」(ワシントン・ポスト紙)につながりかねないとの危機感が広がった。
 同紙によると、オースティン国防長官が13日にイスラエルを訪問後、国防総省は作戦への懸念を国務省に伝達。その後ブリンケン国務長官がテルアビブで計8時間近くイスラエル側と協議したが、実効性のある作戦計画が示されず、米側の焦りは強まった。
 地上侵攻が始まれば、イランに近い武装組織が呼応して駐留米軍への攻撃を激化し、米国とイランの直接衝突に発展しかねない―。「戦略を再考し、慎重に進めた方が良い」。政権関係者は全面侵攻回避を助言し、バイデン氏も19日の演説で「怒りでわれを忘れてはならない」とくぎを刺した。
 ガザ攻撃がアラブ諸国に非難されても、米国のイスラエル支持が揺るがないのは、同国を重視するキリスト教右派を多く抱え、強力なユダヤ人ロビー団体が議会に働きかけていることが大きい。
 一方でガザの人道危機の深まりが報道されるにつれ、若者らリベラル派の間ではイスラエルの占領政策がハマスの攻撃の背景にあるとの見方が拡大。全米各地の大学では「パレスチナの自由」と戦闘停止を訴える集会が続々と開かれている。
 サリバン大統領補佐官は「テロリストと民間人を区別すべきだとイスラエルに言っている」と弁明するが、国内の不満は日に日に高まる。米調査会社ギャラップが26日発表したバイデン氏の支持率は37%で、就任後最低を記録。同社はイスラエルに寄り添いすぎる姿勢が影響したと分析した。
 「パレスチナ人のジェノサイド(民族大量虐殺)をやめさせろ」。大学生ローザ・マルティネスさん(31)は、米議会前で開かれた抗議集会で、米政府への要求に声をからした。(ワシントン共同=高木良平)