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戦地脱出 疲弊の表情 検問所「希望と混乱」錯綜


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【カイロ共同=勝井潤】人道危機が深まる「戦地」から脱出した人々は、一様に疲れ切った表情を浮かべていた。イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘開始以降、パレスチナ自治区ガザから1日、初めて負傷者や外国籍保有者がエジプト側に退避した。「誰が脱出できるのか」について事前に十分な情報が伝わらず、検問所は「希望と混乱が錯綜(さくそう)」(AP通信)した状態だったという。
 「エジプトにたどり着くのは大変だった」。退避したイサム・アイディさん(58)は2日、共同通信の電話取材にそう語った。
 ガザとエジプトの境界にあるラファ検問所に向かう道中、イスラエル軍の攻撃で多くの道路が破壊されていた影響で、何度もルート変更を強いられた。
 妻、子ども6人と計8人でラファ検問所に行ったが、家族の名前は2日のリストにあり脱出できたのは自分だけ。「罪のない子どもが死ぬのを見た。ガザで過ごした中で最悪の経験だった」とアイディさん。「家族が無事に検問所を越えられることを願う」と憔悴(しょうすい)した声で語った。海外メディアが報じた映像では、ラファ検問所のエジプト側には車やバスが集結。夜になり、スーツケースを引いた人々が続々とゲートから出てくると、各国の大使館職員らの案内を受け、それぞれの車に乗り込んだ。
 APや英BBC放送によると、ラファ検問所内は1日、退避を希望する人でごった返していた。インターネットで公表されたリストに基づく身元確認などは全て手作業。スピーカーで名前が呼ばれるのを、多くの人がしびれを切らしながら待っていたという。