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ゼレンスキー政権内不和か 米誌報道、波紋広がる


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領が対ロシア戦勝利に固執し、新たな戦略や方向性を打ち出すのが難しくなっているとの匿名の政権高官発言を米誌タイムが報じ、波紋を広げている。侵攻が長期化し、国際社会の支援継続が不透明さを増す中、政権内部の不和を示唆する内容。側近は火消しや発言者捜しに躍起になっている。
 記事は10月30日に公開された「ゼレンスキーの孤独な戦い」。ロシアやウクライナでの取材経験が豊富な記者によるゼレンスキー氏本人や複数の政権関係者へのインタビューを基にしている。
 ゼレンスキー氏は「私ほど勝利を信じている人間は誰もいない」と訴えたが、側近の一人は「大統領の頑固さが、戦略や方向性を示そうとする政権の努力に水を差している」と指摘。全土奪還にこだわるゼレンスキー氏に早期の停戦交渉入りを持ちかけることはタブー視されているという。
 また、ある高官は、侵攻当初に作戦会議で冗談を飛ばし周囲を和ませていたゼレンスキー氏が、最近は報告を聞き命令を出すと、すぐ退室するようになったと明かした。
 さらに、反転攻勢の遅れを理由に少なくとも1人の閣僚と将官を解任する必要があるとの声も上がっているという。
 記事に対して側近の一人、ポドリャク大統領府長官顧問は不和を否定し「独特な考えを持つ記者の主観だ。匿名の情報源とは何なのか理解できない」と切り捨てた。
 政府で安全保障政策の中枢を担うダニロフ国家安全保障・国防会議書記は「記事に書かれているようなことは、政権内で起こっていない」と説明。「勝利を信じていないのに大統領のそばにいる匿名の人間は誰なのか、答えを出すべきだ」と、発言者を特定する考えを示した。
 ロシアの侵攻を受け記録的な支持を集めたゼレンスキー政権への支持は低下傾向にある。キーウ国際社会学研究所が9~10月に行った世論調査では、大統領を信頼すると答えたのは76%で、昨年5月の91%から下落、政府への信頼は39%と74%から大幅に落ち込んだ。