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「死を見るのはもう嫌だ」 負傷でガザ退避、喜べず


「死を見るのはもう嫌だ」 負傷でガザ退避、喜べず エジプト・アリーシュの病院に搬送されたサイード・オムランさん(ジハードさん提供・共同)
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 【カイロ共同】残された家族を思うと素直に脱出を喜べない―。イスラエル軍の攻撃が激化するパレスチナ自治区ガザで両目を負傷し、エジプトに退避した男性は2日、共同通信の電話取材に「戦争や死を見るのはもう嫌だ」と語り、犠牲者が増え続けるガザの窮状を訴えた。

 男性は、ガザ南部ハンユニスのサイード・オムランさん(23)。付き添いの親族ジハードさん(56)と共に1日、ガザ・エジプト境界のラファ検問所を越え、エジプト北東部シナイ半島アリーシュの病院に搬送された。

 自宅が激しい爆撃を受けたのは、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの大規模な戦闘が10月7日に始まった数日後。爆弾の破片が両目に刺さり、傷が深かった右目は今も視力が回復していない。

 ハンユニスの病院で緊急手術を受け、再手術のため待機していると、病院が攻撃を受け手術室が破壊された。「ガザの医療状況は壊滅的だ」とオムランさん。燃料や医薬品などあらゆる物資が不足しているという。

 1日、ハンユニスの病院から検問所に移動、さらにアリーシュまで搬送された。搬送に感謝しつつ「『地獄』を味わい続けている家族やガザの人々を考えると感情を言葉にできない」と明かす。「ガザに戻れても家族が生きている保証はない」

 ジハードさんも「1時間おきに爆撃があり、悪夢のようだった」と話し、ガザに残した妻と6人の子どもの身を案じる。イスラエル軍は電力設備やパン屋にまで攻撃。がれきの下に取り残された遺体があるため、街には死臭が漂い、遺体を納めるひつぎも足りない。

 「これまで幾度となく戦争や悲劇を経験した。もうたくさんだ」。ジハードさんは「この殺りくをどうにか止めてほしい」と訴えた。