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抑圧が夢と命奪う 遺族「希望かなう社会に」


抑圧が夢と命奪う 遺族「希望かなう社会に」 ニルファさん(右)と姉妹(遺族提供・共同)
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 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権による抑圧が原因で女性18人が自殺した。「娘は医師になる夢を失い命を絶った」。次女ニルファさん(18)を亡くした父モハマドジャワド・フサイニさん(50)が重い口を開いた。やり切れない表情で「女性が夢や希望をかなえられる社会に戻ってほしい」と訴えた。
 日本の高校3年に当たる学年だったニルファさんは7月下旬、家族で訪れた中部バーミヤン郊外の地元のモスク(イスラム教礼拝所)を1人で抜け出し、自宅トイレで首つり自殺した。フサイニさんは「もの静かだが、向上心の強い子だった」と振り返る。
 タリバンは2021年8月の政権掌握以来、女子の中等教育(日本の中学・高校に相当)を停止。22年12月には大学教育も停止した。
 ニルファさんの姉はタリバン復権前に中等教育を終え外国の大学への留学が決まった。競うように勉強に励んでいたニルファさんは「私も国を出て進学したい」と希望していた。しかし、教育停止により卒業資格を取れないため、人生を悲観するようになっていた。今年7月中旬、渡航準備のため姉が首都カブールに移り住むと、さらにふさぎ込んだ。
 「自殺を誰かに漏らしたら、娘が不健全な性行為をしていたと発表するぞ」。事件性の有無を調べるため搬送先の病院に来た治安当局者は死の経緯を知ると脅した。イスラム教では婚前交渉は大罪とされる。暫定政権批判につながる事実を隠そうとしたとみられる。
 フサイニさんにはニルファさんと姉の他にも娘が2人いる。「娘が女性抑圧の犠牲となった事実を話したかった。タリバンが変わらなければ、国を去るしかない」。口をつぐんできた父の思いを明かした。