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危険伴うトンネル攻略 イスラエル軍 ガザ市街地侵攻


危険伴うトンネル攻略 イスラエル軍 ガザ市街地侵攻 パレスチナ自治区ガザでのイスラエル軍による地上作戦=5日(イスラエル軍提供、AP=共同)
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 パレスチナ自治区ガザに地上侵攻するイスラエル軍が中心都市の北部ガザ市の市街地に入った。作戦の成否を分けるのは「迷路」のように張り巡らされた地下トンネル攻略。兵力や装備では軍が圧倒するが、細部まで知り尽くすイスラム組織ハマスに「地の利はある」(専門家)。軍は犠牲回避のため兵士のトンネル進入を最大限避け、ロボットなど最新技術を駆使する方針だ。 (1面に関連)
 「道はいくつも枝分かれし、まるで迷路だ。食料室や武器室もあった」。2014年のガザ地上侵攻で、ガザ地区のトンネル内に入ったイスラエル軍の兵士、ガル・シュワルツさん(30)が当時の状況を振り返った。
 トンネルの出入り口は民家の駐車場にあり、すのこで隠されていた。内部は狭く、防弾ベストや自動小銃を外に置き、拳銃と懐中電灯だけを持ち進入した。「ハマスに拉致された仲間を追ったが、1メートル先もよく見えない暗闇で危険を感じ、45分で引き返した」という。
 トンネルは全長数百キロとされ、英BBC放送によると、深さは最大約80メートル。作戦司令部や人質を収容する部屋もあるとされる。トンネルには地上に通じる無数の出入り口が設けられ「相手がどこにいるのか、全く分からない」(シュワルツさん)状態だ。「イスラエル軍は相当の犠牲者が出ることを覚悟している」と指摘する専門家もいる。

ロボット

 「軍は(犠牲者を減らすため)兵士のトンネル進入を最大限避ける考えだ」。地上作戦に参加する兵士や軍事専門家らはそう口をそろえる。
 まずは地下施設への直接攻撃が可能な特殊貫通弾(バンカーバスター)などを使った空爆で徹底的にトンネルを破壊。トンネル対策で投入された特殊工兵部隊「ヤハロム」などが出入り口を見つければ、カメラを備えたロボットで内部を把握する。軍用犬も使うほか、高圧の煙を噴射して別の出入り口を探すなど持てる技術を駆使する。
 バルイラン大(イスラエル)のエイタン・シャミール上級講師(軍事戦略)は「長さ十数センチの虫のようなロボットもある」と指摘。「軍はハマス戦闘員を多数、捕虜にしており、トンネル内部の情報や人質の行方を調べている」と話す。

病院の攻防

 は多数の住民が避難するガザ最大級の医療機関、シファ病院の地下にハマスの拠点があると主張。特に標的とする地区責任者ヤヒヤ・シンワール氏や軍事部門トップのムハンマド・デイフ氏が潜んでいる可能性もあるとみる。
 軍は完全包囲するガザ市を南北から挟撃し、人質解放への圧力を強めながら最終的にシファ病院に迫るとみられる。シャミール氏は「病院を囲った後、医療関係者や患者ら民間人を最大限避難させる。その後、病院でハマス戦闘員とイスラエル軍兵士の決戦が始まる」との見方を示した。
 (エルサレム共同=平野雄吾)