【エルサレム共同=平野雄吾】「この1カ月はまるで数千年のように長かった」「民族浄化はいつまで続くのか」―。イスラエル軍の激しい攻撃にさらされるパレスチナ自治区ガザ。攻撃開始から7日で1カ月だが、求めた停戦はかなわぬまま。避難生活を送る市民は共同通信の電話取材に憎しみや悲しみと国際社会への不信を語った。「なぜ世界の人々は虐殺を眺めるだけなのか」 (3面に関連)
血だらけの路上、散乱したがれきと遺体。「もう人間としての感覚を失った」。ガザ北部ジャバリヤの看護師アダム・マドフーンさん(35)は目にした光景を思い出し、静かに話した。次女は空爆で右腕を失い、飛び散った破片が頭と腰の骨に刺さったまま。「どうか娘を助けて」
人口約216万人のガザ。多数が親族や友人の誰かを失っている。友人のマハムードさんが死亡したのはサリー・サマクさん(40)。「大学を卒業し、オーストラリアの大学院で学ぶ奨学金を取得したばかりだった」
サマクさんはマハムードさんが語った言葉を覚えている。「ついに人生は僕にほほ笑んだ。ガザを出て世界を見られるんだ」。イスラエルによる境界封鎖で「天井のない監獄」と呼ばれるガザ。外国に行くのは至難の業で、マハムードさんも留学を心待ちにしていた。サマクさんは「彼は世界を見る前に逝ってしまった」と涙ぐんだ。
この1カ月間で目立つのは医療機関の被害の多さだ。国連によると、ガザ全体で破壊や燃料不足により病院のうち半分ほどが閉院。パレスチナ赤新月社は、開業を続けるアルクッズ病院に大きな被害が出ているとして「患者を救ってほしい」と国際社会に訴える。
水や食料、燃料の不足も解消されていない。ガザ市から南部ハンユニスに避難したムスタファ・アリさん(42)は「もう食べるパンがない」と怒り嘆いた。「ガザで流れたパレスチナ人の血は無駄にはならない。この戦争でイスラエルを支持した国々は復讐(ふくしゅう)の波に襲われるのを覚悟すべきだ」
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「虐殺眺めるだけなのか」 憎しみ募り、世界に不信 ガザ攻撃1カ月 路上 遺体、がれき散乱
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琉球新報朝刊
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