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レバノン国境は防衛重視 ヒズボラにワグネルの影


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【エルサレム共同】イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの交戦が両国の国境地帯で激しさを増している。軍はパレスチナ自治区ガザで攻勢を強めるが、対ヒズボラの北部戦線では防衛重視。徐々に高性能な武器を使うヒズボラの背後にはロシアの民間軍事会社ワグネルの影もちらつく。
 ヒズボラはイスラム組織ハマスによる10月7日の奇襲の翌日から攻撃を開始した。当初はシリアに近い係争地、シェバ農場が標的だったが、すぐに国境線全域に拡大。ヒズボラが支持するハマスのレバノン支部もロケット弾を発射し、軍が砲撃や空爆で反撃する。
 米シンクタンク、戦争研究所によると、ヒズボラの主力は対戦車誘導ミサイル部隊だが、地対空ミサイルでヘリを攻撃したり、ドローンを飛ばしたりすることもある。4日には大型ロケット弾「ブルカン」を使用した。
 米主要メディアは最近、シリアのアサド政権がロシア製の移動式防空システム「パンツィリ」をヒズボラに供与する方針に同意し、ワグネルが輸送役となる可能性があると報じた。
 ヒズボラの本格参戦は地域戦争につながりかねない。米国は東地中海に空母を派遣、強くけん制するが、ヒズボラ指導者のナスララ師は「われわれが米艦隊に恐れをなすことはない」と強気だ。
 ただ戦争研究所は、ヒズボラの狙いは軍の兵力を北部に引きつけガザ侵攻作戦への支援を妨害することだと分析。ガラント国防相も「北部で守りを固め、ガザで総攻撃をかける」と説明する。AP通信によるとレバノン側では少なくとも民間人14人とヒズボラ戦闘員ら数十人が死亡、イスラエル側では民間人2人と、兵士7人が死亡している。