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ガザ戦闘休止/米に変化 イスラエル説得/バイデン政権に批判高まり/


ガザ戦闘休止/米に変化 イスラエル説得/バイデン政権に批判高まり/ 9日、パレスチナ自治区ガザ北部から避難するパレスチナ人ら(ロイター=共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イスラム組織ハマス掃討に向け、パレスチナ自治区ガザを地上侵攻するイスラエル軍が、戦闘休止に合意したと米政府が明らかにした。ガザでは民間人被害が拡大し、イスラエルへの憎悪が募る。バイデン米政権はこのままでは「将来のハマス戦闘員」を生むだけだと危惧。米国内でも政権の対応に批判が高まり、イスラエルを説得した形だ。ただ両国とも全面停戦は否定する。人道危機が収束する気配はない。 (3面に関連)

 自賛

 「今後も民間人の安全を擁護し、人道支援の拡大に向けて注力する」。バイデン大統領は9日、X(旧ツイッター)で、戦闘休止はイスラエルのネタニヤフ首相と腹を割って協議を重ねた成果だと自賛してみせた。
 ハマスを過激派組織「イスラム国」(IS)と重ね合わせ、同盟国イスラエルへの肩入れが鮮明だった10月7日の戦闘開始直後とは変化が顕著だ。「国内外からの圧力に押され、イスラエル支援に新たな条件を次々に加えている」。在米の外交筋は指摘する。
 AP通信が今月9日に発表した世論調査結果では、与党民主党の支持者で政権の対応を評価しなかったのは46%。うち56%が戦闘を巡りイスラエルに「より責任がある」と答えた。バイデン氏を支えてきた若年層や非白人の批判が目立つ。

 妥協点

 バイデン政権の焦りは強い。ニューヨーク・タイムズ紙によると、米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長は記者団に、イスラエルへの敵意からハマスに将来加わろうとする動きがガザで盛んになることを懸念していると明らかにした。
 イスラム諸国では米国製品の不買運動も広がる。国内外でさらに逆風が強まれば、バイデン氏が再選を目指す来年11月の大統領選への悪影響も避けられない。一方、1400人以上が殺害されたイスラエルでは、強硬姿勢を支持する声が今も圧倒的だ。
 ネタニヤフ氏は6日の電話会談で、バイデン氏に3日間の戦闘休止に応じるよう求められたが、拒否したと報じられた。9日には米FOXニュースに「人質が解放されない停戦はない。停戦はハマスへの降伏だ」と述べ、ハマス壊滅まで侵攻を続ける従来の考えを強調した。ガザの人道危機を食い止めたいバイデン氏に対し、弱さを見せられないネタニヤフ氏。双方の妥協点が1日4時間の戦闘休止だったとみられる。

 交渉材料

 イスラエルは戦闘休止を「局所的」だとし、方針転換は否定する。約240人の人質の奪還には、地上侵攻継続が必要との姿勢を崩さない。
 ハマスは民間人の人質は「ゲスト」であり、丁重に扱っていると主張してきた。幹部のアブマルズーク氏は共同通信とのインタビューで「彼らを拘束し続けることに関心はない」と言い切った。ただ兵力で劣るハマスにとって、人質は貴重な「交渉材料」で、額面通りには受け取れない。
 国連人道問題調整室(OCHA)の9日の報告によると、ガザでは少なくとも45%の住宅が破壊または損傷した。医療施設への攻撃も続く。
 7人の子を持つナジラ・アブハタブさん(40)は「状況は日々悪くなっている。子どもたちは2日に1回しか食事ができない」と話す。今は戦闘の巻き添えよりも、餓死することが心配だと訴えた。(ワシントン、エルサレム、ドーハ共同)