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言葉遊びの人道回廊 高岡豊・東京外国語大特別研究員


言葉遊びの人道回廊 高岡豊・東京外国語大特別研究員 高岡豊・東京外国語大特別研究員
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に関し、米国はパレスチナ自治区ガザ北部の住民が南部に移動するための「1日4時間の戦闘休止」を発表したが行った先は水も食べ物も電気もない、生活する場所もない状態で、その後に帰ることも生活再建することも約束しない。実質的には強制移住または追放だ。
 「人道回廊」と言うが、移動手段はほとんどなく、道路はがれきや穴だらけで、子どもやけが人も多いのに4時間で10キロ以上を歩くというのは実効性がない。「人道」というのは単なる言葉遊びであり、あまりにもイスラエルや米国に対する風当たりが良くないので、何かやっているふりをしているだけのようにしか見えない。情報戦の一種。「人道」とは何だろうという問題提起を常にし続けないといけない。
 そもそも中東の軍事や安全保障に関する米国の態度は一貫して「イスラエルの気が済むまで時間を稼ぐこと」でしかない。国連安全保障理事会の(イスラエル非難などの)決議も(米国の拒否権行使で)絶対に通らないし、実効性のあることは何一つできないのではないか。
  (談)