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停戦デモ 宗教、民族超え 英国、「三枚舌外交」不満も背景


停戦デモ 宗教、民族超え 英国、「三枚舌外交」不満も背景 11日、ロンドン中心部をプラカードを掲げながらデモ行進するパレスチナ支持者ら
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を続ける中、英国でパレスチナ連帯デモが宗教や民族を超えたうねりとなっている。民間人の犠牲拡大や、イスラエル寄りの姿勢を維持する英政府に対し、憤りは高まる一方だ。対立の元凶とされる第1次大戦時の英国の「三枚舌外交」に対する不満も背景にあるとみられる。即時停戦を求める世論の圧力が英国を揺さぶっている。

多様な参加者

 「今すぐ停戦を」。第1次大戦の戦没者を追悼する記念日の11日、ガザ攻撃に反対する約30万人(警察推計)がロンドン中心部を行進した。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まった10月7日以降、英国各地では毎週末に抗議デモが繰り広げられている。
 表現の自由が重視される英国でデモは日常的だ。ただ今回はアラブ人だけでなく、ユダヤ人コミュニティーも含めた多様な人々が賛同。異なる思想や宗教の人々が大勢で声を上げるのは、2003年のイラク戦争反対デモを思い起こさせる。
 右派の中心人物ブレーバーマン内相はデモを「ヘイトマーチ(憎悪の行進)」と批判するなどして、13日に解任された。ユダヤ人女性活動家ジェニー・マンソンさんは「憎悪の行進ではない。停戦を求め、あらゆるバックグラウンドの人々が共に行進することはユダヤ人に対して失礼なことではない」と訴える。参加者の願いは「単に殺りくを終わらせようということだ」とも強調した。

根源

 第1次大戦下の1915年、英国はパレスチナを支配するオスマン帝国を切り崩すため、アラブ人に協力の見返りに戦後の国家独立を支持することを約束した。一方、16年にはフランスやロシアとオスマン帝国領土の分割で合意し、さらに17年にはユダヤ人の支援を得るため、パレスチナに「ユダヤ民族の郷土」をつくることを約束した。この「三枚舌外交」がイスラエル建国と地域混乱の根源といわれる。
 「全ては(イスラエル建国の)1948年に始まった」。そう書かれたプラカードを掲げるアラブ人の女子学生は「英政府は過去を反省し、イスラエルに攻撃をやめるよう訴えるべきだ。なぜ即時停戦の要求をためらうのか」といら立った。

造反

 15日夜、平日にもかかわらず議会議事堂前に多くのパレスチナ支持者らが詰めかけた。下院(定数650)では即時停戦を求める動議の採決が行われていた。与党保守党を率いるスナク首相と最大野党労働党のスターマー党首はいずれも「人道的な戦闘休止」を支持するが、より長期の停戦はハマスを利するとして二の足を踏む。
 しかし、子どもや女性を含む民間人の犠牲者が増えるにつれ、議員の間でもガザ住民に思いを寄せて即時停戦を求める声が強まっている。動議は反対多数で否決されたが、労働党の56人は党首の方針に造反し、賛成票を投じた。
 (ロンドン共同=植田粧子)