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日本 逆転で敗訴 韓国高裁、「主権免除」認めず 従軍慰安婦訴訟


日本 逆転で敗訴 韓国高裁、「主権免除」認めず 従軍慰安婦訴訟 ソウル高裁で勝訴判決が出た直後、法廷の外で涙を拭う原告の韓国人元慰安婦の李容洙さん=23日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ソウル共同=富樫顕大】旧日本軍の元従軍慰安婦や遺族ら計16人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、ソウル高裁は23日、原告の訴えを却下した一審判決を取り消し、日本政府に元慰安婦の女性1人当たり2億ウォン(約2300万円)の慰謝料支払いを命じた。一審は国家は外国の裁判権に服さないとされる「主権免除」の原則があるとしたが、高裁はこれを認めなかった。
 日本政府は一審から訴訟に参加しておらず、判決は確定する公算が大きい。韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権下で日韓関係が改善する中、両国間にしこりを残す可能性がある。
 上川陽子外相は「極めて遺憾で、断じて受け入れられない」とする談話を出した。岡野正敬外務事務次官は韓国の尹徳敏(ユンドクミン)駐日大使を外務省に呼び抗議。請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだとして「国際法違反を是正するため適切な措置を講じるよう強く求める」と伝えた。
 高裁は原告らは誘引や拉致などで動員され、軍人との性行為を強要されたとし、当時の日本が加盟していた国際条約などに反する不法行為だと指摘。ある国民が自国内で被った不法行為を巡っては加害国の主権免除を認めない国際慣習法が存在するとの見解を示した。
 原告の元慰安婦李容洙(イヨンス)さん(94)は判決後の記者会見で「日本は公式な謝罪と賠償をしなければいけない」と語った。原告側の李相姫(イサンヒ)弁護士は日本政府が賠償に応じない場合、日本政府の資産の差し押さえを試みるかどうかは「考えてみる」と可能性を否定しなかったものの、まずは「自発的に(判決を)履行してほしい」と強調した。
 高裁は日韓請求権協定などで請求権が消滅しているかどうかは「争点になり得るが、日本政府が抗弁しなかったため判断しなかった」とした。