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政権方針と異なる判断


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 韓国高裁が、元従軍慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で一審判決を覆し、賠償支払いを命じた。尹錫悦政権が歴史問題に固執せず日本と安全保障や経済で協力を強化する中、政権の対日方針と異なる判断を司法が下した格好だ。
 2018年に韓国最高裁が元徴用工らの戦時動員に関し、日本企業に賠償支払いを命じる判決を出したことで日韓関係は悪化。昨年5月に発足した尹政権は今年3月、元徴用工訴訟問題で国内世論の反発もある中、日本の立場に沿った解決策を発表し、対日関係改善を推し進めた。
 韓国では司法が政権の意向を忖度(そんたく)するとの見方もあり、今回の慰安婦訴訟の代理人弁護士は「勝訴を予想していなかった」という。
 慰安婦問題を巡っては、韓国では日本の謝罪や歴史教育が不十分だとの認識が依然根強い。弁護士は「判決を利用して日本に謝罪を促したい」と語り、直ちに日本政府の資産差し押さえに取りかかることは否定した。だが日本側が原告の求めに応じない状況が続けば、将来的に強制執行手続きを始める可能性があり、新たな日韓間の懸案となり得る。 (ソウル共同=富樫顕大)