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被爆者「核戦争の危機」 禁止会議開幕 ロ侵攻、ガザで緊迫


被爆者「核戦争の危機」 禁止会議開幕 ロ侵攻、ガザで緊迫 被団協の木戸季市事務局長の演説が行われた核兵器禁止条約の第2回締約国会議=27日、米ニューヨークの国連本部
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 【ニューヨーク共同=稲葉俊之】核兵器禁止条約の第2回締約国会議が27日、ニューヨークの国連本部で開幕した。被爆者が冒頭で演説し、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの戦闘など国際情勢の緊迫化で「核戦争の危機が高まっている」と警告、核廃絶の必要性を訴えた。会期は5日間で、宣言を採択して核抑止論からの脱却を呼びかける。
 一方、米英仏中ロの核保有五大国は条約に参加しておらず、非核国が主導する核廃絶に向けた議論への理解を、条約加盟国の枠を超えてどこまで広げられるかが鍵となる。日本政府も昨年6月のウィーンでの第1回会議に続き参加を見送った。
 長崎で被爆した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の木戸季市事務局長(83)=岐阜市=は演説で、ロシアによるウクライナ侵攻や、核を事実上保有するイスラエルのガザでの軍事作戦に触れ「核戦争が起きれば死の世界が残るだけだ」と警鐘を鳴らした。被爆者のほかに広島、長崎の両市長も会議に参加する。
 議長を務めるメキシコのデラフエンテ前国連大使は「核使用のリスクはかつてないほど顕著だ」と危機感を表明。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は「地政学的な緊張は核なき世界の実現を先送りにする言い訳にはならない。逆に軍縮が急務だ」と強調した。
 初日はパネル討論が行われ、科学的見地に基づき核兵器がもたらす被害を検証した。締約国に配られた宣言の草案は「人類の存亡に関わる核兵器の脅威に対処し、禁止と廃絶に取り組む」と決意を示した。最終日の12月1日に採択する見通し。
 核兵器を初めて全面的に違法化した条約は2021年に発効し、今月上旬時点で93カ国・地域が署名、69カ国・地域が加盟する。