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ロ撤退まで停戦せず ゼレンスキー氏 アジア記者と会見 関心低下に危機感


ロ撤退まで停戦せず ゼレンスキー氏 アジア記者と会見 関心低下に危機感 ゼレンスキー大統領の発言ポイント
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 【キーウ共同=小玉原一郎】ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、共同通信などアジアの一部メディアと首都キーウ(キエフ)の大統領府で会見し、ロシアがウクライナから部隊を撤退させない限り、停戦に応じないと明言した。欧米では停戦を探る動きもあるが、ゼレンスキー氏は否定。中東パレスチナ情勢が緊迫し、侵攻への関心が低下していることへの懸念を示した。来年2月に東京で開かれる日ウクライナ経済復興推進会議の成果に期待を示した。
 ゼレンスキー氏はロシア軍が撤退しないままの停戦は「紛争の凍結」に過ぎず、ロシアは時間を稼いで戦力を回復した後、領土を奪うため再び攻撃を仕掛けてくると主張。「ロシアは平和を望んでいない」と述べた。
 欧米で広がりつつある停戦論に関しては「手を切り落として他人に渡すような案」しか見たことがないと批判し、領土を割譲してまで和平を求める考えはないと断言した。
 一方、ロシア軍の即時撤退を求める自らの提案「平和の公式」への賛同を呼びかけた。平和の公式を巡る国際会合は既に3回開催。ゼレンスキー氏はスイスで4回目を行って首脳級の会合につなげ、半年ほどかけて和平文書を策定するとの構想を明らかにした。国際的な合意を盾にロシアに撤退を迫る狙いがある。
 ロシアのプーチン大統領については「貪欲で常に飢えている」「ソ連がかつて有していた影響力を取り戻すことを目標としている」と分析。ウクライナを屈服させた後は「100%間違いなく、他の国を破壊しようとするだろう」と警告した。
 パレスチナ情勢の混乱を受け、ウクライナ侵攻は国際社会の「焦点から外れた」との見方を示し、ロシアを利する状況が生じていると指摘した。
 対日関係では、2月の復興会議で「非常に具体的なプロジェクトが提案されることになる」と期待を表明した。デジタル化やエネルギー、インフラ、グリーンエネルギーの分野での協力に関心があると述べた。
キーウの大統領府で外国メディアと記者会見するウクライナのゼレンスキー大統領=11月28日
 ウクライナのゼレンスキー大統領は28日の会見で、中東パレスチナ情勢に世界の関心が集まり「ウクライナは忘れられてしまった」と心境を率直に吐露した。ロシア撃退に欠かせない各国の支援が細りつつある現状に、重大な危機感を示した。この瞬間も続く侵略行為に忘却は許されない。
 ゼレンスキー氏は「全員の関心が中東情勢に向けられた。まさにロシアの狙い通りであり、残念ながら彼らは望む結果を手にしている」と強調し、世界情勢はロシアに有利な方向に動いていると訴えた。ウクライナを取り巻く環境は厳しい。長引く戦争は一進一退が続き、国内の結束には揺らぎが見える。兵器供与に巨費を投じる欧米では支援疲れが出ている。追い打ちをかけたのがパレスチナ危機に端を発する関心の低下だ。
 ゼレンスキー氏は会見で「われわれは自由と民主主義のために戦っている」と2度繰り返した。
 ロシアの侵略で民間人が日々犠牲になり、全領土の2割が占領下にある。ウクライナの現実から目をそらせば、国際秩序を破壊しようとするロシアの暴挙に暗黙の承認を与えたことになる。(キーウ共同=小玉原一郎)