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再休戦の交渉難航 疑心根深く攻撃長期化も 人質136人 圧力 地下潜伏


再休戦の交渉難航 疑心根深く攻撃長期化も 人質136人 圧力 地下潜伏 ガザ地区を巡る状況、イスラエル軍の進軍エリア
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 パレスチナ自治区ガザで再び始まったイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が激化する中、仲介役のカタールなどが、決裂した戦闘休止合意の再建交渉を続ける。ハマスが拘束する人質を追加解放すればイスラエルが応じる可能性も伝えられる一方、イスラエルはハマス壊滅を強硬に主張。双方の疑心は根深く交渉難航は必至で、攻撃長期化の恐れは強い。
 7日間の休止後、戦闘が1日に再開したガザではイスラエル軍の空爆や砲撃で多くの建物が崩壊し、死傷者が続出した。ハマスもイスラエル側にロケット弾攻撃を繰り返した。カタール政府は「深い遺憾」を表明し「人道的な戦闘休止へ努力を続ける」と強調した。
 イスラエルは戦闘目標の一つに、10月7日の奇襲攻撃でハマスに拉致された人質全員の奪還を掲げる。軍報道官は1日夜、ハマス拘束下の人質はまだ136人いると明らかにした。地元メディアによると、政府はハマスが女性ら10人を追加解放すれば1日間の戦闘休止に応じる意向を示したという。
 ただ人質を巡るイスラエルの不信感は強い。戦闘休止期間中に行われた人質解放の際、ハマスは対象者リストに遺体を一時含め、イスラエルが強く反発した。一部の人質は他の武装勢力が拘束しており、ハマスが全員の居場所を把握していないとの見方もある。英BBC放送は1日夜、現段階で再休止の見込みは低いと伝えた。
 一方、エジプトの軍事専門家ムスタファ・フセイン・カメル氏は「いずれ両者が再び戦闘休止で合意する可能性は高い」とみる。ハマスに対しては人道危機に苦しむガザ住民から本格的停戦を求める声が強まっており、イスラエル政府も兵士の死傷者増加で世論の圧力を受けていると指摘する。
 イスラエル軍は地上侵攻をガザ北部から南部に拡大する方針だ。10月の奇襲の首謀者と見なすハマスのガザ地区責任者、シンワール指導者は南部ハンユニスの出身。南部にもあるとされる地下トンネル網に潜伏している可能性が指摘される。米紙はイスラエル軍が、地下施設への直接攻撃が可能な大型の特殊貫通弾を米国から供与されたと伝えた。
 国連によると、南部にある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の各施設で避難生活を送る住民は95万8千人に上り、攻撃の強化で民間人被害が拡大するのは確実だ。戦闘再開前日にイスラエルを再訪したブリンケン米国務長官は、作戦が長期化すれば米イスラエル双方に対し国際社会の非難が強まると懸念を表明したという。
 「長い戦争になる」。イスラエルのネタニヤフ首相は何度も強調している。英紙フィナンシャル・タイムズは1日、イスラエル軍が1年以上に及ぶハマス掃討計画を立て、ガザ侵攻を来年初頭まで集中的に続ける想定だと報じた。(エルサレム共同=吉田昌樹)