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反転攻勢半年 膠着続く ウクライナ 政権と軍の確執表面化 ロ、分断狙い揺さぶりか


反転攻勢半年 膠着続く ウクライナ 政権と軍の確執表面化 ロ、分断狙い揺さぶりか 軍の訓練施設を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領(手前右)とザルジニー総司令官(左から2人目)=月3日(ウクライナ大統領府提供・ロイター=共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【キーウ共同】ウクライナ軍が大規模反転攻勢を開始してから4日で半年が経過した。ウクライナ軍はロシア軍の防衛線を一部突破したものの数カ月にわたり戦況は膠着(こうちゃく)。長期戦が見込まれる中、ゼレンスキー政権と軍の間では確執が表面化した。国内の分断を狙ったロシアの揺さぶりとの見方もあり、ウクライナは正念場を迎えている。
 ウクライナ軍のザルジニー総司令官は英誌エコノミストが11月に報じたインタビューで、戦争が「膠着状態」にあり、打開するには兵器の技術革新が必要だと指摘。これに対しゼレンスキー大統領は記者会見で「膠着ではない」と反発した。
 国民の人気が高いザルジニー氏が政界に転じればゼレンスキー氏のライバルになり得るとされる。来年の大統領選実施の可否が取り沙汰される中、政権与党の議員がザルジニー氏に公然と辞任を求める事態にもなった。
 政権と軍の不協和音は国内外の関心を集めたが、ウメロフ国防相は地元メディアに、対立は「虚偽」だと指摘。国防省情報総局のユソフ報道官も「占領者にとって前線での戦争より安上がりだ」と述べ、ロシアが内紛を扇動しているとの見解を示した。
 昨年2月の侵攻後、ウクライナ軍は首都キーウ(キエフ)からロシア軍を撤退させ、東部ハリコフ州や南部ヘルソンを相次いで奪還した。その後目立った戦果が乏しい中で国民は疲労を蓄積させている。キーウ国際社会学研究所が今年9~10月に実施した世論調査では「平和を獲得するために領土の一部を断念しても構わない」と回答した人が14%で、反攻開始前の5月より4ポイント増えた。
 膠着が長引けば、ウクライナの士気をそぐ狙いでロシアが情報戦を仕掛ける余地を生む。ゼレンスキー政権の目下の懸念は国際社会の支援と関心の低下だ。11月25日にはキーウを含む各地に過去最大の無人機攻撃があり、冬に入りロシア軍のインフラ攻撃が激化する可能性がある。