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安倍派裏金問題 最大派閥、不自然な収入 ノルマと矛盾、過少申告か


安倍派裏金問題 最大派閥、不自然な収入 ノルマと矛盾、過少申告か 安倍派と他派のパーティー収入
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党最大派閥の清和政策研究会(現安倍派)の2018~22年分の政治資金パーティー収入が、他派閥と比べて少額にとどまっていた。他派閥の倍近い約100人の所属議員を抱える中で、不自然さは否めず、販売ノルマとも矛盾する。5年間で議員にキックバック(還流)した総額が約5億円に上る可能性が浮上。有識者は「裏金をつくるために過少申告しているとの疑念を拭いきれない」と指摘する。

  (1面に関連)

 大盛況

 政治資金収支報告書によると、直近5年間の安倍派のパーティー収入は、18年分2億802万円、19年分1億5338万円、20年分1億262万円、21年分1億2万円、22年分9480万円と推移する。

 他派閥と比較すると、18年分こそ7派閥中3番目だったものの、19年分以降は5番目にとどまる。特に直近3年分のパーティー収入は1億円前後で、最多収入だった麻生派や二階派と比べても半分にも満たない。

 現在、安倍派は所属議員が99人で、第2派閥の麻生派は56人にとどまる。40人の二階派の関係者は「わが派より約1億円も収入が少ないのはあり得ない」と指摘する。

 収入に比してパーティー会場は「大盛況」(出席者)だった。22年5月に東京都内のホテルで開かれたパーティーでは、議員のあいさつなどを中継するモニター室を含め計五つの会場が設けられ、いずれも立すいの余地はなく2千人以上が来場したとされる。

 つじつま

 販売ノルマとの整合性にも疑問符が付く。パーティー収入が1億円の場合、1枚2万円が相場の券を5千枚売る必要がある。安倍派議員は約100人のため、単純計算で1人当たり50枚(100万円)となる。

 ただ当選回数などに応じてノルマが増える。関係者によると、最もノルマが少ないのは衆院当選1回の30枚で、当選4回で60枚、当選5回は100~150枚、閣僚経験者は200枚以上とされる。裏金疑惑が浮上する松野博一官房長官、事務総長の高木毅国対委員長ら有力者「5人組」は250枚以上で、最も多いノルマは375枚に上る。

 約60人の衆院議員だけでも少なくとも6千枚を超える。現在40人の参院議員にも独自のノルマがある。安倍派議員の一人は「ノルマを達成できなければ、身銭を切っていた」と明かしており、つじつまが合わない。

 不可解

 政治資金に詳しい法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「これほどパーティーの売り上げが少ないのは不可解だ」と強調する。

 白鳥氏は裏金を選挙活動費に転用したのではないかと見立てる。「巨大派閥を維持するためには議員の選挙を物心両面で面倒みなければいけない。実態解明を急ぐべきだ」と訴える。

 東京地検特捜部は13日の国会閉会後、還流を受けた安倍派議員を聴取する見通しだが、同派若手は肩を落とす。「派閥幹部からは、いまだに何の説明もない。捜査の行方を見守るしかないのか」
(共同通信)