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危機感背景に方向転換


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は激しい交渉の末、化石燃料依存からの脱却を打ち出した。一部の国が長年抵抗していたが、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標実現が危うい瀬戸際の状況が、合意を後押しした。現状の不十分な取り組みから世界が方向転換する一歩になる。
 COP28は危機感に包まれた会議となった。開幕前に欧州連合(EU)の気象情報機関が、今年が記録上最も暑い年になると発表。初日には世界気象機関(WMO)が、平均気温が産業革命前を約1・4度上回り「1・5度目標」に迫ると明らかにした。多くの国が足元で大雨や干ばつといった異常気象を経験し、脱炭素化を加速する必要性を痛感していた。
 加えて、議長国アラブ首長国連邦(UAE)が有志国を募り、再生可能エネルギー拡大をはじめとした誓約を相次ぎ公表。対策強化の機運を高めたことも締約国全体の合意にプラスに働いた。
 成果文書の文言は前進した一方で、気候変動を抑えるのに必要な排出削減の水準と、各国の目標数値に大きな開きがある現実は変わらない。COP28で実施した対策の進捗(しんちょく)評価は、国内対策が大幅に引き上げられて初めて意味をなす。着実に行動に移されるのかどうか、国際的な厳しい監視が今後も必要になる。 (ドバイ共同)