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墓碑銘 2023・国内 「世界のトヨタ」基盤確立 訴え続けた平和、脱原発 大江健三郎さん 豊田章一郎さん


墓碑銘 2023・国内 「世界のトヨタ」基盤確立 訴え続けた平和、脱原発 大江健三郎さん 豊田章一郎さん 山田太一
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今年亡くなった方々の墓碑銘をまとめた。 (敬称略、年齢の次は死去または死亡確認の月日、芸名などの人は本名略、海外は現地時間)

 戦後日本を代表する作家大江健三郎(88歳、3・3)は「飼育」「個人的な体験」など多くの作品を世に出し、ノーベル文学賞を受賞した。平和、護憲、脱原発を訴え続けた。「九条の会」結成にも加わった。文化勲章は「戦後民主主義と似合わない」と辞退した。
 「教授」とあだ名された坂本龍一(71歳、3・28)は音楽ユニット「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」のメンバーで、クラシックなどにも精通。非戦や環境、脱原発の運動家でもあり、亡くなる直前も東京都に明治神宮外苑の再開発見直しを求めた。
 ドラマーの高橋幸宏(70歳、1・11)は坂本らとYMOを結成。音楽グループ「アリス」のリーダー、谷村新司(74歳、10・8)は「チャンピオン」や「昴(すばる)」など歌謡史に残る名曲を手がけた。
 小渕、森両内閣の官房長官で元自民党参院議員会長の青木幹雄(89歳、6・11)は与野党に幅広い人脈を誇り「参院のドン」と呼ばれた。「社会党のプリンス」だった横路孝弘(82歳、2・2)は北海道知事や衆院議長を歴任。沖縄返還時の日米密約に関する機密公電を外務省職員の女性から入手し、横路に託した元毎日新聞記者の西山太吉(91歳、2・24)が同じ月に亡くなった。
 官房長官や自民党幹事長を務めた細田博之(79歳、11・10)が死去したのは、衆院議長を辞任した直後。元参院議長の扇千景(89歳、3・9)は宝塚歌劇団出身で、テレビ司会者から転身した。
 セブン&アイ・ホールディングス名誉会長の伊藤雅俊(98歳、3・10)はスーパー大手のイトーヨーカ堂を創業し、国内初の本格的なコンビニとしてセブン―イレブンを全国に展開。旧経団連会長のトヨタ自動車名誉会長、豊田章一郎(97歳、2・14)は「世界のトヨタ」の基盤を確立する。経済同友会の元代表幹事でウシオ電機創業者の牛尾治朗(92歳、6・13)は政界と財界を結ぶ「回廊」の役割を果たした。
 創価学会名誉会長の池田大作(95歳、11・15)はカリスマ的存在として、学会を国内有数の宗教団体に育て上げる一方、公明党を設立し、政界にも影響力を持った。大川隆法(66歳、3・2)は宗教法人「幸福の科学」の創設者で総裁。
 1967年に茨城県利根町布川で男性が殺された「布川事件」で無期懲役とされた桜井昌司(76歳、8・23)が逮捕されてから再審無罪で冤罪(えんざい)を晴らすまでに、約44年も要した。民族派団体「一水会」元代表で評論家、鈴木邦男(79歳、1・11)はイデオロギーを超えた言論活動を続けた。
 「人間の証明」などの社会派ミステリー小説や、旧日本軍の暗部に迫るノンフィクション「悪魔の飽食」で知られた作家森村誠一(90歳、7・24)の反戦と護憲の姿勢は揺るがなかった。
 動物と共に暮らした作家畑正憲(87歳、4・5)は「ムツゴロウ」の愛称で親しまれた。
 「岸辺のアルバム」や「ふぞろいの林檎(りんご)たち」など名作テレビドラマの脚本家山田太一(89歳、11・29)は晩年、東日本大震災や老いがテーマの作品も。作家で脚本家平岩弓枝(91歳、6・9)の代表作は小説「御宿(おんやど)かわせみ」、テレビドラマの脚本は「肝っ玉かあさん」「ありがとう」。
 歌舞伎俳優の市川猿翁(83歳、9・13)は現代的な「スーパー歌舞伎」を創設。新劇界を代表する俳優で劇団民芸代表の奈良岡朋子(93歳、3・23)は「奇跡の人」のサリバン先生が当たり役で、映画「原爆の子」「息子」などにも出演した。
 テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」の司会などで活躍した上岡龍太郎(81歳、5・19)は理路整然とした語りや鋭いツッコミで、関西を中心に人気を集めた。
 漫画家松本零士(85歳、2・13)の「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」などの作品は海外のSF映画にも影響を与えたという。野見山暁治(102歳、6・22)は自由奔放な筆致の洋画家で、戦没画学生の作品を集めた長野県上田市の「無言館」開設にも尽力。
 プロ野球西鉄(現西武)の強打者、中西太(90歳、5・11)は球団の3年連続日本一を支え、「フォークボールの神様」杉下茂(97歳、6・12)は中日初の日本一に貢献。脳腫瘍で引退した元阪神外野手、横田慎太郎(28歳、7・18)のユニホームが今年のリーグ優勝と日本一で同期入団の選手と共に胴上げされた。
 横田忠義(75歳、5・9)はバレーボール男子日本代表のエーススパイカーとして、72年ミュンヘン五輪で金メダルを獲得した。
 大きな体と陽気な性格から「大ちゃん」の愛称で親しまれた大相撲元大関朝潮の長岡末弘(67歳、11・2)は高砂部屋を継承し、朝青龍を横綱に育て、朝乃山を大関昇進に導いた。父と兄2人も関取の元関脇寺尾、福薗好文(60歳、12・17)は筋肉質の体と甘いマスクで人気を誇った。
 64年東京五輪のバレーボール女子で金メダルの寺山(旧姓宮本)恵美子(86歳、12・7)は「東洋の魔女」と呼ばれた日本代表チームのアタッカー。同五輪で体操女子団体総合銅メダルの池田(旧姓田中)敬子(89歳、5・13)は出産後も活躍した日本の女性アスリートの先駆けとなった。
  政治・経済  元自民党衆院議員の中山太郎(98歳、3・15)が憲法調査会長時代は野党との協調を重視。保利耕輔(89歳、11・4)は文部相や自民党政調会長を歴任。元民主党副代表の岩國哲人(87歳、10・6)は島根県出雲市長の時に現在の「出雲駅伝」を誘致。元官房副長官の石原信雄(96歳、1・29)は歴代最多の首相7人に仕えた。
 元商船三井社長の生田正治(88歳、11・13)は日本郵政公社初代総裁として民営化の道筋をつけた。祖父が創業した資生堂の名誉会長、福原義春(92歳、8・30)は文化人経営者として有名。椎名武雄(93歳、4・19)は日本IBMの「中興の祖」と言われる元社長。田淵義久(91歳、11・8)は野村証券社長としてバブル期の株高を支えたが、大口顧客への損失補塡(ほてん)などで辞任した。
 中日新聞社最高顧問の大島宏彦(89歳、8・23)は同社社長と会長を、羽佐間重彰(95歳、6・19)は産経新聞社長とフジサンケイグループ代表をそれぞれ務めた。
  学術  立命館大教授の立岩真也(62歳、7・31)は障害者や安楽死を研究していた社会学者。米ハワイ大名誉教授の柳町隆造(95歳、9・27)は不妊治療の顕微授精技術を確立し、世界初のクローンマウスを作製。東京大名誉教授の上田誠也(93歳、1・19)は地震研究の権威だった。
  文化  「機関車先生」などの小説やエッセー「大人の流儀」シリーズで人気の作家伊集院静(73歳、11・24)は「最後の無頼派」。小説や詩、脚本など幅広い分野で活躍した富岡多恵子(87歳、4・8)の代表作は小説「波うつ土地」。詩人で作家三木卓(88歳、11・18)は中国からの引き揚げ体験を描く。いずれも作家の永井路子(97歳、1・27)は「炎環」などの歴史小説を、西木正明(83歳、12・5)は「凍(しば)れる瞳」などのノンフィクションノベルを、豊田有恒(85歳、11・28)は「倭王の末裔(まつえい)」などのSF作品を残した。
 辻村寿三郎(89歳、2・5)はNHKテレビの人形劇「新八犬伝」などで知られる人形作家の第一人者。映画監督の中島貞夫(88歳、6・11)は「木枯し紋次郎」「序の舞」などで精彩を放つ。書家の日比野光鳳(94歳、8・23)は、かな書の現代化に努めた。
  芸能  歌手の大橋純子(73歳、11・9)は「シルエット・ロマンス」、KAN(61歳、11・12)は「愛は勝つ」、もんたよしのり(72歳、10・18)は「ダンシング・オールナイト」が大ヒットした。鮎川誠(74歳、1・29)は「シーナ&ロケッツ」のギタリスト。作詞家、三浦徳子(74歳、11・6)の代表作は郷ひろみの「お嫁サンバ」など。ダンスプロデューサーの夏まゆみ(61歳、6・21)は「モーニング娘。」や「AKB48」の振り付けなどを手がける。
 俳優財津一郎(89歳、10・14)は「キビシーッ!」の決めぜりふと「ピアノ売ってちょうだ~い」のCMが話題に。那智わたる(86歳、7・21)は宝塚歌劇団の元トップスター。笑福亭笑瓶(66歳、2・22)と島崎俊郎(68歳、12・6)はバラエティー番組で活躍したタレント。春日三球(89歳、5・17)は地下鉄を題材にした夫婦漫才で人気を集めた。
  社会  磯村尚徳(94歳、12・6)はNHK「ニュースセンター9時」の初代キャスター。評論家の森田実(90歳、2・7)は戦後政治に詳しい「ご意見番」、無着成恭(96歳、7・21)はTBSラジオ「全国こども電話相談室」の回答者を長く務める。元ひめゆり平和祈念資料館館長の本村ツル(97歳、4・7)は沖縄戦でひめゆり学徒隊として動員された。元日本労働弁護団会長の宮里邦雄(83歳、2・5)は労働者の地位向上に取り組んだ。
  スポーツ  プロ野球広島の元エース、北別府学(65歳、6・16)は球団の黄金期を築き、南海(現ソフトバンク)などで活躍した門田博光(74歳、1・24)は歴代3位の通算567本塁打。52年ヘルシンキ五輪で競泳男子1500メートル自由形2位の橋爪四郎(94歳、3・9)は戦後の日本水泳界をけん引した。