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縮む地域 基盤維持を模索 若者や外国人、定着が課題 将来推計人口


縮む地域 基盤維持を模索 若者や外国人、定着が課題 将来推計人口 日本語教室で着物の着付けを体験した外国人住民ら=11月、佐賀県伊万里市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国立社会保障・人口問題研究所が公表した人口推計は、大幅に縮む地域の未来像を突きつけた。教育、医療、交通といった生活基盤が崩れたり、自治体運営が立ちゆかなくなったりする恐れもある。国は少子化対策や東京一極集中の解消に取り組むが道半ば。各地域は独自に若者や外国人の受け入れを模索している。 (6面に関連)

「仕事がない」
 秋田県の山あい、上小阿仁村。林業が活況だった1960年に約7千人いた住民は2千人を切った。今回の推計では2050年時点に760人まで減る。
 役場職員は22日、取材に「若い人が戻ってこず職員のなり手が減っている」と不安そうに応じた。70代の男性住民は「子育て世代も定着してほしいが、あてがう仕事がないと呼び込むことすらできない」とこぼす。
 村には民間バスが通っているが便数は限られ、高齢者は村が導入した自動運転カートに頼る。鉄道、バスは乗客減や運転手不足で、全国的に維持が難しくなるケースが既に相次いでいる。
 地方の人口減が進む中、政府は支援金を出して都市部からの移住を促進。今年7月に決定した第3次国土形成計画では市町村の枠組みにとらわれず、デジタルを活用して必要な生活サービスをそろえる「地域生活圏」構想を掲げたが、具体化はこれからだ。

独自支援
 岸田政権は「次元の異なる少子化対策」として児童手当拡充なども打ち出したが、財源確保が課題で、効果を疑問視する声がある。
 新潟県出雲崎町は、国の制度では対象外の0~2歳児まで含めた保育料無償化を柱とした独自の子育て支援策を展開する。18歳まで子ども1人を育てると約270万円相当の支援になり「全国トップクラス」を自負。町への転入者が転出者を上回る状況が続いている。
 それでも出生数は伸び悩む。50年の推計人口は2100人余りで20年からほぼ半減。町の担当者は「子育て支援を強化して第2子、第3子を産んでもらい、空き家をうまく流通させ若い世代も呼び込みたい」。

住民理解
 佐賀県伊万里市は技能実習生が急増し、人口5万人のうち1%は外国人に。市は20年から日本語教室を開催し、バスの乗り方や着物の着付けを学んでもらい、日本人とのふれあいを重視する。
 市で多文化共生マネージャーを務める章潔さん(46)は「外国人抜きでは経済が成り立たない。受け入れる意義を住民に理解してもらうことが不可欠だ」と強調した。
 70年の人口推計では国内総人口の1割を外国人が占める。日本人の住民が全国的に減少に向かう中、その存在感が重みを増していくのは確実だ。
 共同通信が7~8月実施した全国自治体アンケートでも、外国人が暮らしやすいように、行政情報の多言語化など環境整備に取り組む自治体は63%に及ぶ。一方、ノウハウ不足や外国人労働者も都市部に集中しやすいなどの課題が指摘された。
 移民政策に詳しい国士舘大の鈴木江理子教授は「『外国人は出身国に帰る』という意識から自治体は脱却すべきだ。賃金水準が低い地方でも定着してもらえるよう、住民の意識を高めるなど選ばれる地域となる努力が必要だ」と話している。