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捏造証言の捜査「謝罪を」 大川原化工機事件 きょう判決 社長、逮捕・起訴の不当さ訴え


捏造証言の捜査「謝罪を」 大川原化工機事件 きょう判決 社長、逮捕・起訴の不当さ訴え 取材に応じる大川原化工機の大川原正明社長
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 警視庁公安部が手がけた外為法違反事件での起訴が取り消しとなり、捜査の違法性が争われている国家賠償訴訟の原告「大川原化工機」(横浜市都筑区)の大川原正明社長(74)が取材に応じ「捜査機関側は謝罪すべきだ」と当初の逮捕や起訴の不当さを強調した。審理は現役捜査員が法廷で「捏造(ねつぞう)」と証言する異例の展開を見せ、27日に東京地裁で判決を迎える。
 逮捕、起訴された疑いは噴霧乾燥装置の不正輸出。訴訟が急展開したのは今年6月30日の証人尋問だった。「まあ、捏造ですね」。出廷した警視庁公安部の捜査員が自ら捜査の正当性を真っ向から否定。大川原社長は「勇気を持って言ってくれた。軽い言葉ではない。ありがたかった」と振り返る。
 顧問だった相嶋静夫さん、元役員島田順司さんと共に外為法違反容疑で警視庁公安部に逮捕されたのは2020年3月。一貫して潔白を主張し、大川原社長と島田さんの身体拘束は21年2月の保釈まで約1年に及んだ。相嶋さんは勾留中に体調を崩し、同じ月に亡くなった。
 手錠をかけられ、椅子に縛りつけられて取り調べを受ける日々。「警察での留置、取り調べが一番きつかった」と大川原社長。体調を崩した時もあったが「捜査のおかしさを裁判で明らかにしよう」との思いが支えた。
 刑事事件の初公判が目前に迫った21年7月、起訴が急きょ取り消しとなった。「うれしいという感じは全くなく、拍子抜けだった」。同9月に東京都と国に損害賠償を求めて提訴し、舞台は民事訴訟へ。捜査員の「捏造」発言が飛び出したのは審理の終盤だった。
 証言の中には輸出規制を所管する経済産業省に対し、警視庁公安部長の働きかけがあったとの内部しか知り得ない内容も。今は「公安部は事件を作りたかったんだ」との思いを強くしている。
 取り調べでは捜査側に都合のよい内容の調書がまとめられていった。「紙と鉛筆を持って話を聞くことさえ許されず、フェアではなかった」。弁護士の立ち会いも必要と感じたという。
 東京地検で起訴段階の捜査に携わった検事が証人尋問で、当時の判断に「間違いがあるとは思わない」として謝罪を拒否した怒りも大きい。「訴訟中なのは理解するが、われわれに迷惑をかけ、仲間も1人亡くなった。認めない限り、良くならない。結果として間違えたことは認め、謝るべきだ」と判決を待つ。