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佐藤栄作授賞の批判予想/74年平和賞でノーベル委/非核強調、アジア意識


佐藤栄作授賞の批判予想/74年平和賞でノーベル委/非核強調、アジア意識 ノルウェー・ノーベル研究所が開示した1974年のノーベル平和賞の選考用説明資料(左)と、佐藤栄作の推薦状=3日、オスロ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【オスロ共同】1974年の佐藤栄作元首相(01~75年)へのノーベル平和賞授与を巡り、ノルウェーのノーベル賞委員会が批判を予想しながらも「日本の核保有を阻止した努力を強調すれば賛同が得られる」と結論付けていたことが分かった。ノルウェー・ノーベル研究所が共同通信に3日開示した選考過程の資料で明らかになった。アジア初の平和賞受賞者となり、資料によると、日本だけでなくアジアを意識した授賞だった。
 佐藤は非核三原則を表明し、核拡散防止条約(NPT)に調印したことなどが評価された。しかしベトナム戦争を支持したり、米国の「核の傘」に依存する安全保障政策を推進したりしており、適格性を疑問視する声も多かった。
 ノーベル賞委が授賞を発表した74年10月8日の会合記録は、平和賞と「個人的経歴との関連性に曖昧さがある」との反対意見を明記。日本の非核武装政策を理由にすれば共感が得られ「日本人の大半が大変満足し、アジアの政界の多くも恐らく同様だ」と指摘、授賞を決めた。ただ「批判を予想しなければならない」とも付け加えた。
 また、選考用の説明資料は佐藤個人が果たした役割を「明確に把握するのは困難」とした上で「戦後日本が採ってきた平和推進政策の指導者として受賞に値する」と評価した。
 佐藤の受賞では、日本政府が活発なロビー活動を展開していたことが分かっている。当時の田中角栄首相ら17人連名の推薦状も開示され「これまで平和賞受賞者は主に欧米人に限定されてきた」と強調。佐藤が受賞すれば「アジアが国際政治に与える影響が増す中、最重要な出来事として称賛される」と訴えた。
 74年は国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの創設者の一人であるアイルランドのショーン・マクブライド元外相も共同受賞した。貧民救済に尽力したマザー・テレサらが最終選考に残っていた。