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住民「議論の乗っ取りだ」 トランプ陣営、隣州の高官動員 アイオワ州 共和党員集会


住民「議論の乗っ取りだ」 トランプ陣営、隣州の高官動員 アイオワ州 共和党員集会 米アイオワ州デモインの教会で開かれた共和党員集会で、アイスクリームの空き容器に投票用紙を入れる有権者=15日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ぎこちない一般市民の演説に、空のアイスクリーム容器でつくった投票箱。米アイオワ州の州都デモインで15日夜に開かれた共和党員集会は、手作り感が目立つ草の根の議論の場だ。だがトランプ前大統領の陣営は隣州の政府高官が論者として乗り込んで加勢するなど、圧倒的な組織力を見せつけた。「議論の乗っ取りだ」。地元住民からは反感の声も上がった。
 記録的な寒波に見舞われ、氷点下20度を下回る極寒の中、デモインの2地区合同の会場となった教会には厚手のコートに身を包んだ有権者約270人が集まった。「誰に投票するんだ」。ほぼ満席の会場から話し合いの声が聞こえてくる。
 州内の学校や公共施設が大統領選の幕開けの舞台となり、4児の母ジア・ビンガマンさん(37)は「米国の真ん中に位置しながら、普段は注目が集まらない農業州の意見が反映されるのは良いことだ」と誇らしげだ。
 集会では投票に先立ち「各候補の代弁者」が応援演説する。ヘイリー元国連大使を代表する立場の地元男性支持者はTシャツ姿で「政治家ではないのでご容赦を」と切り出し、緊張した様子。原稿をうまくめくれず、言いよどむ場面もあり、盛り上がりに欠けたまま「もう時間が来てしまった」と出番を終えた。
 対照的だったのはトランプ氏陣営だ。代弁者に選ばれたのは南隣ミズーリ州のベイリー司法長官。背広姿で、演説慣れした自信に満ちあふれ、トランプ氏が多岐にわたる実績を上げたと強調。「投票して米国を再び偉大にしよう」と声を張り上げ、ひときわ大きな歓声を浴びた。
 参加者は全ての演説を聴き終えると、幅10センチほどの長方形の投票用紙に候補者の名前を書き込み、バケツ型のアイスクリームの空き容器に放り込んだ。集計の結果、片方の地区ではトランプ氏が1票差でヘイリー氏に勝利。もう一つの地区ではヘイリー氏が16票差でトランプ氏を退けた。
 「トランプ氏は地域の話し合いの場を乗っ取ろうとした」。ヘイリー氏を支持した研究者の男性(60)は他州の政府高官を動員した地元住民の説得に不快感をあらわにする一方で「トランプ陣営の組織力がいかに強固か思い知らされた」ともこぼした。(デモイン共同=稲葉俊之)