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情報公開条例を広める 前津榮健さんを悼む 仲地博(沖縄大名誉教授)


情報公開条例を広める 前津榮健さんを悼む 仲地博(沖縄大名誉教授) 米軍ヘリ墜落事故14年を受けた集会で学長としてあいさつする前津榮健さん=2018年8月13日、宜野湾市の沖縄国際大
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

前津榮健先生が息を引き取ったとの知らせが入り、何を言っているのか分からずに聞き直してしまった。
 琉球大学の学生時に私が行政法を指導したころからの付き合いだ。たいへん真面目で意欲に満ちた学生だった。私とは後に、県町村会の広報誌で地方自治で活躍した人物のオーラルヒストリーを聞き取る連載を担当することになり、取り組みは28年間続いている。2カ月ほど前にも共に聞き取りを行い、彼はいつも通り堅実で的を射た質問をしていたように感じた。
 功績で特筆すべきは、県内市町村の多くで情報公開条例の制定にかかわったことだろう。
 今では情報公開の考え方は当たり前になっているが、当時は「そんなものやる必要があるのか」という意見もあった。そうした中で市町村にかみくだいて必要性や制定する意味を啓蒙(けいもう)していた。信頼される行政法学者だった。
 沖縄国際大学の学長に就任し、教育者としても功績を残した。彼は話をまとめる能力にたけ、事を荒立てずに自分の考えを述べることができた。
 学長をしながらゼミも担当していた。面倒見も良く、卒業生も含め親しまれていた印象だ。学生会館を造るなど学習環境の整備に力を注ぎ、沖国大を九州でも有数の大学に育てた一人だと思う。
 道半ばの思いがあり彼としても残念だろうが、心安らかに眠ってほしい。
 (沖縄大名誉教授、談)