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「完璧じゃなくていいよ」 前橋市の職員発信 ひきこもりラジオ


「完璧じゃなくていいよ」 前橋市の職員発信 ひきこもりラジオ 「ひきこもりラジオ(仮)」の特別版として開かれた講演会=月、前橋市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 前橋市の職員2人が今年、ひきこもりの人たちへビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で語りかける取り組みを始めた。その名も「ひきこもりラジオ(仮)」。丸かっこには「初めから完璧じゃなくていいよ」とのメッセージを込めた。トークの内容は事前に決めず、出たとこ勝負。時には迷う姿も見てほしいと自然体で発信する。
 「秋はナシ派? ブドウ派?」「今日はナシ派が多いですね」。市保健予防課の加藤木啓充さん(45)と鈴木智貴さん(32)の進行で和やかに進む。話題は食や暮らしの情報から、アニメや精神医学の用語まで多彩だ。2人がその場で悩んだり相談したりする場面もありのまま見せる。
 2人は精神保健福祉士の資格を持つ。市では約10年前からひきこもりの家族向け教室を開いていたが、本人へのアプローチができず課題だった。新型コロナウイルス禍でズームの利用が広まったのを好機と捉え、自分の部屋からでも参加してもらおうと2人が企画。今年2月からほぼ毎月第3月曜日に30分間“放送”している。
 参加者は実名や顔を明かさず入室でき、チャットで会話に加わることもできる。「行動を起こしやすくするため、参加の自由度を上げている」と鈴木さん。常連もでき、チャットが盛り上がる回もあるという。
 参加者のアンケートには好意的な声もあるが、「スタッフと話したいか」という質問には「今は話したくない」との率直な回答が多い。それでも「本人の現状を市が知ることができたのは前進だ」と受け止めている。
 10月下旬には特別版として、職員との掛け合いで元ひきこもりの人が経験を語る講演会を、ズーム配信を併用して初めて開催。当事者や家族など30人以上が参加した。
 加藤木さんは「すぐに結果が出なくても継続したい。少しでも外に興味を持つきっかけになればいい」と話している。