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中高年貢がせ ホストに貢ぎ 「頂き女子」公判 2億円詐取、「人生狂った」反省も


中高年貢がせ ホストに貢ぎ 「頂き女子」公判 2億円詐取、「人生狂った」反省も 事件を巡る金の流れのイメージ(写真はユーチューブより)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「頂き女子りりちゃん」を名乗り、恋愛感情を利用して金をだまし取るための指南書を販売、自身も複数の男性から金を詐取したとされる女の公判が始まった。一連の捜査では、言葉巧みに中高年を翻弄(ほんろう)して計約2億円を得る一方でホストに金をつぎ込みナンバーワンに導くほど没入、負の連鎖の深みに陥る様子が浮き彫りになった。
 女は住所不定、無職渡辺真衣被告(25)。風俗店の客から金銭援助を受けたことをきっかけに、金をだまし取る「頂き」を始めたという。捜査関係者によると、風俗店の客の他、婚活アプリを通じて真剣に結婚を望む男性に接近。男性を「おぢ」と呼び、「起業の失敗でできた借金を返せば同居できる」、「親と縁を切るために手切れ金が必要」などと偽っていた。
 愛知県警は8月以降、渡辺被告を詐欺容疑などで3回逮捕。被告の口座には2019年以降、横浜市や茨城県などの男性数十人から数万~1億円超の入金があった。手渡し分も合わせ、2億円前後を得た可能性がある。
 「ガチ恋こそが高額GETの道」。渡辺被告は経験を基に手口を指南書にまとめた。男性に真剣な恋愛感情を抱かせるノウハウを記し、疑われた場合は「どうしてそうなるの? すごい悲しい」と切り返すなど、想定問答も用意していた。
 立正大の西田公昭教授(社会心理学)は「恋人商法と似た手口」と指摘。男性に好意を示して幸福感を与え、その上で同情を買うことで、頼られる存在でありたいという気持ちを刺激し「お金なんか惜しくない、助けてあげたいと思わせている」と分析する。
 指南書はSNSを通じて千人以上が購入し、2千万円近くを売り上げたという。被告はSNSで若い女性の相談に乗ることも多く、捜査関係者は「相手に響く言葉を返してくれると信頼を集めていた。人を引きつけるものがある」と打ち明ける。
 渡辺被告は「ホストに貢ぐため人をだまし続けた」と供述。逮捕時の資産はほぼゼロだった。最終的にホストが金を手にする構図が明らかになり、県警は詐取金と知りながら代金を受け取った疑いで、新宿・歌舞伎町のホスト田中裕志容疑者(26)を逮捕した。
 渡辺被告は21年から店で田中容疑者を指名して1億円以上を支払い、売り上げを10位前後から1位に押し上げた。容疑者は投稿動画で、被告が3千円程度の酒器を1277万円で購入してくれたと貢献をたたえた。
 逮捕の1カ月ほど前にホスト遊びをやめたという渡辺被告。「ホス狂いでしか人間との関わり方を知らない」、「もう誰か止めて」とSNSに心情を吐露していた。
 県警の取り調べに事実関係を認めて「償いたい」と口にし、捜査員にこう託した。「ホス狂いで多くの女の子の人生がおかしくなった。歌舞伎町を浄化してほしい」