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外国人実習生「働く仲間」 労組、職場改善を支援 相談員にミャンマー人


外国人実習生「働く仲間」 労組、職場改善を支援 相談員にミャンマー人 ミャンマー国籍の男性の労働相談に応じるミンスイさん(右)=8月、東京都港区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 中小製造業を中心とする産業別労働組合「JAM」が、外国人技能実習生の支援に力を入れている。労働相談の経験豊富なミャンマー人の専従職員を迎え、賃金未払いなどさまざまな問題を巡って企業と100回以上の団体交渉を重ねた。希望を抱いて海を渡ってきた若者らを「働く仲間」として受け入れ、公正な職場への改善を目指す。
 「人間らしく扱われない場所だった」。昨年9月ごろ来日し、佐賀県内でとび職の技能実習に就いたミャンマー国籍の男性(34)は、エアコンもない極寒のプレハブ小屋で暮らした。労働時間を過少算定され、今年2月に退職。一時は監理団体などと連絡が取れない失踪状態になった。
 JAMが2019年に立ち上げた個人向け労組「JAMゼネラルユニオン」で、専従職員となった同胞のミンスイさん(63)を人づてに知り、東京都内の事務所を訪問。同じく専従の藤岡小百合さん(38)と共に相談に乗ってもらい、勤務先に書類を送って未払い賃金を請求した。「解決に向けて動きそうだ」と男性は笑顔を見せる。
 実習生は22年末で約32万5千人。日本の労働法制の保護対象だが、劣悪な就労環境が問題視されている。JAMは加盟労組の職場に実習生が多く、安河内賢弘会長は「既に移民大国。労組が主な活動の一つとして取り組まなければ」と強調する。
 1992年に来日したミンスイさんは、JAMのサポートを受けつつ長年、外国人の労働相談に乗ってきた。ミンスイさんを加えたゼネラルユニオンは、セクハラや労災隠し、高額の寮費請求など実習生の困り事に対処し、悪質なケースは現地を訪れて交渉。企業側が謝罪するなど多くのケースを解決に導いている。
 近年は、内職の強要や「研修」と称した無賃労働など、違法に働かせる手口が巧妙化。藤岡さんは、アジア諸国への差別意識が根底にあると指摘し「日本の就労環境全体を良くするためにも、改善が必要だ」と訴える。
 21年に国軍がクーデターを起こし、生活が厳しいミャンマーからの実習生は増加傾向にある。多くは「日本が公正だと信じて来ている」とミンスイさん。「その国で人権侵害があってはいけない」と力を込めた。
 外国人技能実習制度 発展途上国の人材に日本の技術を伝える「国際貢献」を目的とし、1993年に開始。滞在できる期間は最長5年。2022年末時点での技能実習による滞在者は約32万5千人で、出身国はベトナムが最多、インドネシア、フィリピンと続き、ミャンマーは約1万7千人。実習先での違法な長時間労働や賃金不払い、暴行被害といった問題が指摘されている。