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マングローブ植え振興 奄美・枝手久島「観光資源に」 企業や大学協力、慎重意見も 


マングローブ植え振興 奄美・枝手久島「観光資源に」 企業や大学協力、慎重意見も  無人島「枝手久島」の植栽予定地に、試験的に植えられたマングローブの苗=3月、鹿児島県宇検村(日本航空奄美営業所提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 東洋一と目された大規模石油精製基地計画が半世紀前に頓挫し、放置された鹿児島県・奄美大島南部の無人島「枝手久島(えだてくじま)」にマングローブを植え、多様な生物の生息地として観光資源に育て上げる構想が動き出した。地元の宇検村と大手企業、大学が協力。本年度中にも苗を植え始める方針。地元には慎重論もあるが、実現するかどうか注目を集めそうだ。

100株
 「自然を大事に守り継いでいきたい」。宇検村の元山公知村長は9月17日、伊藤忠商事と日本航空、学術的知見を提供する上智大との4者協定締結後、鼻息も荒く構想への意気込みを語った。
 5年間の計画期間中に植栽するのは島内に広がる約0・75ヘクタールの休耕田。村が重機で開墾し、島外からのツアー客らがマングローブの苗約100株を植える予定。同村職員らが試験的に苗を植え、順調に成長することを既に確認したという。

衝突
 枝手久島はかつて、宇検村の住民が水田を築き、耕作し続けてきた歴史がある。同島の土地所有者が多い宇検集落の津田直隆区長(69)は「集落にとって大事な島。協定締結は良かった。協力したい」と好意的に受け止めている。
 枝手久島で東京の企業による石油精製基地計画が取り沙汰されたのは1973年。島と奄美大島との海峡約300ヘクタールを埋め立て、当時の精製規模で東洋一とされる日産50万バレルの基地が建つ予定だった。
 奄美群島のほとんどの自治体議会は計画への反対を決議。反対派の運動のピーク時には機動隊も派遣された。企業側は84年に正式に進出計画断念を表明したが、事態は収まらず、反対派グループ排除を求める右翼団体との衝突も起きた。
 当時を知る宇検村元収入役の川渕哲二宇検村文化財保護審議会会長(76)は、反対派グループの問題も含め当時のいさかいに関しては解決済みと強調。計画を容認する考えを示す一方、対象地域には元々マングローブ林がないため「マングローブは枝手久島に適した植物なのか」などと指摘。植える樹種の選定には慎重な検討が必要との考えを示した。