漫画家のナナトエリさん(42)、亀山聡さん(41)夫妻が、日常をモチーフにした「僕の妻は発達障害」を月刊コミックバンチ(新潮社)に連載している。時にすれ違い、ぶつかりながら、たどり着いたのは「お互いさま」の気持ち。当事者の視点で紡ぐストーリーには、障害とは何かを考えるヒントがありそうだ。
ナナトさんが発達障害と診断されたのは30代半ばのこと。同じ漫画家志望の亀山さんと知り合い、結婚から1年がたっていたが、明け方までけんかが絶えず「毎日が戦争のような状態だった」。
他のことに注意が向き、亀山さんが話した内容を全然覚えていない、といったことが、たびたびあり、半信半疑で検査に臨んだ。結果はLINE(ライン)で知らせた。
〈発達障害だった。ゴメン〉
障害者と結婚させてしまった申し訳なさから出た言葉だったが、励ますように笑顔のスタンプが返ってきた。
しかし、その日を境に夫婦のバランスが崩れた。「それまでは平等に理屈で闘っていたのに、どこかでこっちの感覚の方が普通で正しいと思い始めていた」(亀山さん)。ナナトさんは「彼を起こしてしまう」と、びくびくして寝返りさえ打てなくなり、自ら命を絶とうとしたこともあった。
不安なのは亀山さんも同じ。仕事や結婚生活がうまくいかず、オンラインゲーム依存症になり、半年間で200万円をつぎ込んだ。
精神科医のアドバイスで、それぞれが自分自身と向き合った時に、初めて相手の苦しみを知ることができた。
「僕の妻は―」は2020年に連載スタート。発達障害があるアパレル店員の知花と、夫で漫画家アシスタントの悟の日常を描く。
知花は快活で売り上げ成績も良いが、同時に二つの作業をこなすのが苦手。商品をたたんでいる最中に客から声をかけられ、途中で放り出し、周りの店員に迷惑をかける。家事を順番通りにこなさないと混乱し、悟は途方に暮れる。
そんな中、2人は対話を重ねながら、さまざまな工夫をこらす。悟が漫画に集中したい時に発動する「邪魔しないアラート」も、その一つ。知花が分かりやすいよう部屋に張り紙をし、やりとりはLINEで済ませる。
物語はフィクションで、ナナトさん自身のアパレル経験や交流サイト(SNS)で知り合った当事者らの話を基に、発達障害にまつわるテーマを取り上げている。「僕はぐずぐずと考え過ぎてしまうが、妻はすぱっと決断できる」(亀山さん)。互いに補い合いながらの共同作業だ。
作品で最も表現したかったのは「感謝」の気持ち。「発達障害といっても一人一人は全然違う。その人に合った環境や人に出会えれば、生きやすくなる」という。
夫婦の関係を象徴する悟のせりふがある。
〈(知花は)確かに変だ。でも僕は変でいいと思う。僕だって大した人間じゃない。お互いさまなんだ〉
有料
発達障がい日常 漫画に 変でいいよ。お互いさま 夫婦、衝突や悩み超え「感謝」
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この記事を書いた人
琉球新報朝刊
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