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評伝 細田博之前衆院議長 実務にたけた選挙博士 教団との接点、説明果たさず


評伝 細田博之前衆院議長 実務にたけた選挙博士 教団との接点、説明果たさず 10月13日、記者会見で衆院議長辞任を表明する細田博之氏 =衆院議長公邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 細田博之前衆院議長は選挙制度に明るく「選挙博士」と呼ばれた。実務にたけた仕事師で、官房長官や自民党幹事長の要職を歴任。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点を巡り「自民党と教団を結ぶ元締」(野党幹部)と批判されたが、十分な説明を果たさないままこの世を去った。
 東大卒で旧通産省を経て政界入りした細田氏は、小泉政権で官房長官に就いて頭角を現した。「細田に任せれば、仕事が一歩ずつ着実に進むと考えたんだろうね。案外、改革派だとも思われたのかもしれない」。衆院当選5回の中堅格で当時の小泉純一郎首相に抜てきされた理由を、細田氏はこう振り返っていた。
 2008年に麻生太郎首相に幹事長、16年に安倍晋三首相から総務会長へ起用されるなど、トップに信頼された姿が浮かぶ。13年に区割り改定法が成立した衆院小選挙区定数「0増5減」は、選挙制度の知識を生かして細田氏が主導した。
 原発政策推進のドンでもあった。「太陽光なんて一日浴びても皮膚が赤くなる程度。原子力のエネルギーにかなうはずがない」が持論だった。
 ピアノ演奏や天体観測が好きな趣味人だった。後輩議員や記者に「忙しくても本業以外の楽しみを持った方がいい。特に自然科学を愛すべきだね」と説いた。ひょうひょうとした語り口で、洒脱(しゃだつ)さがあった。
 ワインを愛好したが、痛飲はしない。「酔って思考が論理的でなくなるのは嫌い」というのが理由。靴下は同じブランドの同じ色のものを何足も持った。「右と左を合わせる必要がないからね」。合理的な人だった。
 21年の衆院議長就任後は、負の側面で注目された。教団問題のほか、女性記者へのセクハラ疑惑も浮上。記者会見で「誰一人セクハラされたと主張していない」と強調し、居直った。本人から申告がないなら問題ないという理屈は、被害者の視点を欠いているのではないか。
 地方を中心に議席が減る衆院小選挙区定数「10増10減」について「地方いじめ」と異を唱え、野党から「国会で決めたことを国会の長が覆すのか」と抗議を受けた。国会に託された安定的な皇位継承策に関し、積極的に議論を前進させようとしなかったのも残念だった。(共同通信記者 蒔田浩平)