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障がいある子も釣り共に 大阪・釣具店「フラッグシップ」 「地域福祉の拠点目指す」


障がいある子も釣り共に 大阪・釣具店「フラッグシップ」 「地域福祉の拠点目指す」 大阪市西成区の釣具店「Flag ship」
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 釣り具と情報を求めて釣り人(アングラー)たちが集う一方、障がいのある子どもたちが釣りを楽しむ機会を提供する福祉事業所を兼ねた釣具店「Flagship(フラッグシップ)」が大阪市西成区にある。店主の遠山歩さん(38)と妻のちはるさん(44)は「釣りと地域福祉の拠点を目指したい」と意気込む。
 自転車や買い物客が行き交う下町の商店街に面した店舗には、ルアーでチヌ(クロダイ)を狙う「チニング」で使う道具がずらりと並ぶ。チヌは大阪湾に多く生息。年中手軽に楽しめるが、潮の流れや干満、時期により釣果が異なるため奥が深い。チニングは広島発祥とされ、関西では淀川や武庫川の河口を中心に楽しまれている。
 店は障がいや難病のある利用者が雇用契約を結んで支援を受けながら働ける「就労継続支援A型」の事業所も兼ね、店の奥にある調理場では利用者が食事を作り、ちはるさんが運営する系列の福祉施設に運ぶ作業を担っている。利用者約10人は、他にも商品の陳列や事務をこなし、今後は仕掛けの製作も担う予定だ。
 作業とは別に毎月1回、体や発達に障がいのある子どもたちを船に乗せ、釣りを楽しんでもらう取り組みを約3年前から続けている。体調悪化などに備え、15分で船着き場に戻れる大阪湾奥の釣り場に限るため、かじを取る歩さんは「魚の群れを探すのが大変」と話す。保護者からは、釣りを通じて自分でできることが少しずつ増え、成長する子どもの姿が好評だ。
 当初は子どもの水難事故が全国で起きていることを懸念し、水の怖さを教えるべく始めた。普段は切り身でしか見ることがない魚を自分で釣って食べる経験が「食育」にもなっているという。
 自身も発達障がいがあり、周囲に公表して働く遠山さん夫妻。今後は車いす利用者や高齢者、障がい者など全ての人が釣りをできるようなサービスを始めたいと語る。ちはるさんは「釣りを通じてできることの幅を少しずつ広げ、仕事や将来につなげてもらう場にしたい」と話している。

 就労継続支援A型事業所 一般企業で働くことが難しい障がい者を雇用し、就労場所の提供や能力向上のための訓練を実施する施設。利用者は労働基準法上の労働者となり、最低賃金以上の給与が支払われる。作業時間に制限はないが、一般的な就労よりも短い4~6時間が多い。厚生労働省によると、2020年時点の利用者数は全国で約7万2千人。