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厳しい上下関係が「伝統」 宝塚俳優急死 歌劇団対応、今後の焦点に


厳しい上下関係が「伝統」 宝塚俳優急死 歌劇団対応、今後の焦点に 宝塚俳優急死を巡る経過
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 宝塚歌劇団(兵庫県)の俳優の女性(25)が9月に急死した問題は、遺族の代理人弁護士が10日に記者会見し、過重労働などが原因の自殺だと訴えて謝罪と補償を要求、新たな局面を迎えた。華やかさの陰で厳しい上下関係を伝統としてきた歌劇団の対応が、今後の焦点となる。
 「過重な業務や上級生劇団員のパワハラによって心身の健康を損ない、自殺に至った」。10日の記者会見で遺族代理人の川人博弁護士はそう断じ、歌劇団と運営する阪急電鉄の責任を追及した。川人弁護士は、2015年に電通の女性新入社員が過労自殺した際に遺族代理人を務めるなど、過労死問題の第一人者として知られる。
 女性は宙(そら)組所属で、入団7年目までの俳優で上演する新人公演をまとめる年次だった。代理人によると、本公演の準備に加えて、新人公演で「演出家を補佐し、役柄の配置の決定、シナリオの作成、演出全般にわたる仕事」を課された。
 まとめ役の年次は、通常は各組5~8人程度いるが、宙組は退団や組替え、休演が重なり女性ら2人しかいなかったという。8月16日に本公演の稽古が始まって以降は「膨大な仕事量で、睡眠時間は3時間程度の状況が続いた」と過酷さを訴えた。宝塚歌劇に詳しい演劇評論家は「組替えで補充するか、近い年次でフォローする態勢をとるなど、やりようがなかったのか。なぜ彼女の負担の大きさに目が行き届かなかったのか」と話す。
 過重労働と並んで挙げられたのが、怒号を浴びせるなどの上級生からのパワハラだ。川人弁護士は「一般の組織以上に縦の関係が徹底されている」歌劇団の体質が度を越した指導を生む要因だと指摘。元タカラジェンヌの東小雪さんは「明らかに理不尽でも、宝塚では上級生からの『愛ある指導』とされ、脈々と受け継がれてきた」と言う。
 女性が急死したのは本公演が初日を迎えた翌日の9月30日。歌劇団によると、その日から新人公演の稽古が本格化する予定だった。
 歌劇団では外部弁護士らが事実関係を調査、近く結果を公表するとしている。宙組ファンの30代女性は「もう純粋に好きという気持ちで観劇できず、つらい。真実を明らかにして、これ以上苦しむ生徒さんがいないようにしてほしい」と歌劇団の対応を注視している。