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〈ひと〉ウクライナの前線で 取材を続ける 寺島(てらじま)朝海(あさみ)さん 兵士の「本音」大切に


〈ひと〉ウクライナの前線で 取材を続ける 寺島(てらじま)朝海(あさみ)さん 兵士の「本音」大切に ウクライナの前線で取材を続ける寺島朝海さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ロシアの侵攻が続くウクライナで地元の英字紙キーウ・インディペンデントの記者として前線で取材を重ね、兵士の生の声を伝えてきた。10月、優れた国際報道に携わった記者らに贈られるトムソン・ロイター財団の「カート・ショーク賞」を受賞した。
 「悲惨な現場の実情を伝える必要がある」。戦争が長期化し、ウクライナ軍や政府がプロパガンダ色を強める中、重視するのは兵士の「本音」だ。犠牲の大きさを公表したがらない軍関係者から記事に文句を付けられたこともある。
 前線に通い始めたのは2月。部隊に密着し、何十人もの兵士と会話を重ねて言葉を引き出す。東部ドネツク州の激戦地では3カ月間に500人の兵士の半数以上が死傷したとの証言も。取材した49歳の志願兵にその後連絡すると、妻から「夫は死んだ」と知らされた。
 「身近な人が亡くなっていく現場。現実に慣れなければならない」。仲間の記者も命を落とした。それでも兵士から「聞いてくれてありがとう」と言われることがやりがいにつながっている。
 日系企業に勤める父親の赴任に伴い、10歳からキーウ(キエフ)で過ごした。テニスに熱中し、プロを目指したがけがで諦めざるを得なかった。
 2021年11月の設立時からキーウ・インディペンデントに所属。侵攻後、両親はポーランドで暮らすが一人残った。取材に駆け回る日々。「ほとんど家にいない」とはにかんだ。友人とビールを飲むことが楽しみの23歳。大阪府枚方市出身。