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父から性虐待、賠償認めず 広島高裁、除斥期間理由に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 幼少期から父親に性的虐待を受け心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、広島市の40代女性会社員が70代の父親に約3700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は22日、民法の「除斥期間」を理由に請求を退けた一審広島地裁判決を支持し、女性の控訴を棄却した。
 脇由紀裁判長は判決理由で、父親による性的虐待の事実は認定し「極めて悪質かつ卑劣な行為で、父親の責任は極めて重い」と指摘。「人倫にもとる事案で厳しく非難されるべきだ」とも述べ、虐待により女性が深刻な精神的苦痛を被ったと認めた。
 一方で、女性が10代後半の時点で性的虐待に起因する症状が現れているとして、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する除斥期間が2018年には経過したと判断。18年より前に請求権を行使することも可能だったとして「苦痛は察するに余りある」としながらも控訴を棄却した。
 女性側は、10代当時とは異なるPTSDの症状が18年に現れたため、除斥期間の起点は18年だと訴えていたが、両方の症状は異質ではなく、別のものとは言えないとして退けた。
 判決によると、父親は女性が保育園に通園するようになったころから、胸をなめるなどのわいせつ行為を始めた。小学4年の時に性行為をし、女性が明確に拒否できるようになった中学2年ごろまで続いた。
 女性と代理人の弁護士は判決後、広島市内で記者会見し、女性は「家族間の性被害で、除斥期間が設けられているのはあり得ない」と判決を批判した。弁護士は上告する方針を示した。