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映画「ヤジと民主主義」 を監督した 山崎裕侍さん 小さな自由の抑圧 危機感


映画「ヤジと民主主義」 を監督した 山崎裕侍さん 小さな自由の抑圧 危機感 映画「ヤジと民主主義」を監督した山崎裕侍さん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

2019年の参院選。札幌市で応援演説中の安倍晋三首相に「帰れ」「増税反対」とやじを飛ばした市民が相次いで警察に排除された。その是非を問うドキュメンタリー映画「ヤジと民主主義」を作った。
「小さな自由の抑圧を見逃すと、声を上げられない社会になるのではないか。危機感から取材を続けた」と話す。
同市の北海道放送(HBC)の報道部デスク。やじで排除は新聞に先に報じられたが、若手記者と共に当事者を捜し、現場の映像を集める。戦時中の表現弾圧事件までさかのぼって、ローカルニュースで報道を重ねた。
排除された市民2人は道警を提訴し、一審は勝訴したものの、二審では1人の請求が退けられた。「反対を言いにくい雰囲気ができて、異論やノイズが少なくなっている」と懸念する。
北海道出身の52歳。大学探検部でヨルダンを訪れた時、キャンプの難民から「俺たちのことを伝えてくれ」と頼まれ、報道を志す。東京のテレビ番組制作会社で、少年事件などを追った。
2006年、「地に足の着いた取材をしたい」とHBCへ。医療や原発をはじめ、幅広いテーマを扱ってきた。
「取材って本当に楽しい。自分が想像していない世界と出合える。特に地方局は、暮らしている人とダイレクトにつながっている。地域の課題を解決できれば、他の地域にも応用できる」
重視しているのは多様性だ。「僕らが伝えられていない声が、まだまだある」と意気込む。