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馳氏アピール暗転、墓穴 五輪招致に「機密費」 説明避け、強まる批判


馳氏アピール暗転、墓穴 五輪招致に「機密費」 説明避け、強まる批判 会合で講演する石川県の馳浩知事=17日、東京都内のホテル
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 石川県の馳浩知事が、東京五輪招致を巡る失言で波紋を広げている。内閣官房報償費(機密費)で制作したアルバムを国際オリンピック委員会(IOC)委員に贈ったと口を滑らせた講演は、スポーツ政策や招致活動への貢献をアピールするはずが、墓穴を掘って大失態に。発言を撤回して謝罪したが、再三追及されても説明責任を避ける姿勢に批判も強まる。当日の経緯を振り返った。

冗舌
 17日夕、東京・内幸町の帝国ホテル。円卓が10個余り並んだ宴会場でのフォーラムは、日本体育大が主催した。スポーツ振興に関して提携する自治体を集めた会合で、基調講演を担ったのが、松浪健四郎理事長の教え子である馳氏だった。集まった自治体関係者ら、約90人が耳を傾けた。
 講演では、高校時代に松浪氏と出会って専修大でレスリングの指導を受けた話に始まり、進路や結婚など人生の岐路で同氏に相談してきたことを、笑いも誘いながら冗舌に披露。助言を受けた一つとして、衆院議員時代に携わったスポーツ基本法に話題を展開した。

ばかども
 同法は、1961年にできたスポーツ振興法を全面改正する形で、2011年に制定された。東京五輪の招致活動にあたり、馳氏は「スポーツ振興法のままでは国がバックアップできない」状態だったことを強調。「財務省のばかども」(馳氏)の抵抗を押し切って法整備にこぎ着けたとし「招致を勝ち取るバックボーンとなったのはスポーツ基本法」と誇った。
 ここで、問題の発言が飛び出した。紹介したのは、当時の安倍晋三首相から「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたエピソード。「ここからしゃべること、メモを取らないようにしてくださいね」と前置きした上での言及だった。

全面撤回
 その後もアルバムに関し「外で言ったら駄目ですよ。官房機密費を使ってるから。1冊20万円するんですよ」などと、よどみなく詳細を語り続けた。終了後、発言を報じることを伝えた共同通信記者に「オン(レコ)とは聞いていません」と抗弁。報道陣に公開されていたと伝えられても「オンとは聞いていません」と繰り返すのみで、立ち止まることなくエレベーターに乗り込んだ。
 約3時間後の午後9時ごろ。石川県は報道各社に対し「全面的に撤回いたします」とする馳氏のコメントを送付した。
 馳氏は22日の記者会見で自らの発言を巡り「全面撤回しているので、五輪招致に関して今後一切発言することはない」と述べ、撤回理由として挙げた事実誤認がどの部分なのかも明言を避けた。