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創薬強化、新組織検討 政府 大手とベンチャー連携 既に類似組織、疑問も


創薬強化、新組織検討 政府 大手とベンチャー連携 既に類似組織、疑問も 売り上げ上位の薬をつくった企業の国籍
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本の創薬力強化のため、政府が製薬業界などを支援するための新組織設立を検討していることが25日分かった。海外では近年、大手製薬企業が一から開発するのではなく、大学などの研究機関やベンチャー企業の成果を実用化する動きが盛んだが、国内では不十分だとの危機感が背景にあり、大手とベンチャー企業の連携強化を狙う。ただ財源確保が課題となる上、研究成果と企業をつなぐ日本医療研究開発機構(AMED)が既にあり、政府内からも「本当に新組織が必要なのか」との声が上がる。
 自民党のプロジェクトチームは5月、創薬力の発展を目的とした国家戦略を定めるよう提言。10月末には日本化学療法学会が新組織創設を厚生労働省に提言し、武見敬三厚労相は直後の閣議後記者会見で「選択肢の一つだ」と述べた。
 関係者によると新組織の名称は「創薬インキュベーション機構」が候補。ベンチャー企業などの成果を目利きして、いち早く臨床試験(治験)につなげ、実用化の経験が豊富な大企業に引き継ぐ過程を支援する。
 売り上げ上位を占める薬を開発した企業を国籍別で比較すると、米国が多数を占め、増え続けているのに対し、日本は2010年代後半から横ばいとなっている。
 米国の創薬の中心地として注目されているのが東部のボストン。周辺には研究者や起業家、大企業が集まり、投資家も含めて関係性をつくりやすい環境になっている。
 一方、日本では実用化まで到達するベンチャー企業は一握り。国内にもボストンのような仕組みが必要だとして、新組織設立が浮上した。
 ただ政府内にもAMEDの機能強化を優先すべきだとの声は根強い。新組織設立の財源確保も課題で、実現するかどうかは不透明だ。
 神奈川県立保健福祉大大学院の坂巻弘之教授(医療経済学)は「日本の創薬力が落ちているのは確か。先にその原因分析をきちんとしないといけない」と話している。