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全盲でプロレスラー目指す/大舘裕太さん(38)/誰もが挑戦しやすい社会を


全盲でプロレスラー目指す/大舘裕太さん(38)/誰もが挑戦しやすい社会を 息子の駿介君(左)に手を引かれ、入場する大舘裕太さん=10月、岐阜県多治見市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 誰もが挑戦しやすい社会をつくりたい―。そんな思いを胸に、18歳までに両目の視力を失った大舘裕太さん(38)はプロレスラーになる夢を再び追いかける。5年前にトレーニングを再開。来春、視覚障害レスラーとしてデビューを目指す。
 10月、岐阜県での福祉関連イベントに招かれ、エキシビション試合に臨んだ。視力がわずかに残っていた10代以来となるリングで、覆面レスラーに関節技を決めるなど健闘。敗れたが、すがすがしい顔でマイクを握り「諦めなければ夢はかなう」と観客に呼びかけた。
 生後すぐに目にがんが見つかり、右は義眼、左もほとんど見えない状態で育った。それでも性格は活発で前向き。格闘漫画「キン肉マン」などに熱中し、柔道は黒帯、プロレスは16歳でリングに立つほどのめり込んだ。
 18歳で全盲となり「心にふたをするようになった」と一時プロレスを離れた。マッサージ師になったが、30歳過ぎに、ぼうこうがんを発症し、肝臓に転移。死に直面したことをきっかけに「もう一度プロレスがやりたい」との思いが膨らんだ。
 同じ職場で出会い、結婚した妻の恵津子さん(50)には「夢を諦める姿を子どもに見せないで」と背中を押された。クラウドファンディングで資金を集め、石川県加賀市の自宅から週2度ほど名古屋市のジムに通って厳しい練習をこなした。
 10月の試合を観戦した息子の駿介君(10)は「プロレスができて楽しそう」と父親の闘う姿に目を輝かせた。「目が見えない僕だからこそ、挑戦することで多くの人に元気を与えられる」と大舘さん。このほど名古屋市に拠点を移転。今後も社会へ、愛息へ、リングからメッセージを届ける。