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「人と人がつながれる“文化の力”信じる」 沖縄とアイヌの文化交流「チャランケ祭」30回目の開催 エイサー、カムイノミなどを披露 東京


「人と人がつながれる“文化の力”信じる」 沖縄とアイヌの文化交流「チャランケ祭」30回目の開催 エイサー、カムイノミなどを披露 東京 「第30回 チャランケ祭2023」でアイヌ伝統の踊りを披露するいなほ保育園の卒業生ら=25日、東京都中野区
この記事を書いた人 Avatar photo 安里 洋輔

 【東京】沖縄とアイヌの文化交流を図るイベント「チャランケ祭2023」が東京都の中野区役所前広場で25日から26日まで行われた。1994年から始まり今年で30回目。沖縄のエイサー、アイヌの神事「カムイノミ」など、それぞれの地域に伝わる伝統芸能・行事が披露され、観客を楽しませた。実行委員長の高橋貫太郎さん(57)=東京都杉並区=は「争いの絶えない世の中だけど、人と人とのつながり、続いてきた文化の力でわだかまりを解かしていけたら」と語った。

 25日はアイヌのカムイノミ、26日は南風原町の津嘉山大綱曳など県内各地の祭事で行われる「旗あげ・旗おろし」が儀式として行われ、15団体が歌と踊りを披露した。

 東京・三宅島の太鼓や西アフリカ・ガーナの太鼓、朝鮮半島の民俗芸能など地域、国境を越えた文化の交流もあった。

 イベントは、JR中野駅前にあった沖縄料理店「あしびなー」の店主、金城吉春さんが、北海道帯広市でアイヌ文化の保存活動を続ける広尾正さんとともに立ち上げ、中野区内の各所で30年にわたって続いてきた。

エイサーの演舞=26日、中野区役所前(提供写真)

 金城さんは21年9月、67歳で急逝。昨年からは高橋さんが、金城さんの後継として2代目実行委員長を務める。母親が石垣市登野城出身で、杉並区高円寺の老舗沖縄料理店「抱瓶(だちびん)」店主の高橋さんは、「祭りには初回から参加している。吉春さんの意思を絶やしたくなかった」と語る。20、21年はコロナ禍で無観客での開催を余儀なくされ、今年は3年ぶりに飲食ブースも出展。高橋さんは「こんなにぎわいは久しぶり」と頬を緩ませる。

 25日は、埼玉県樋川市のいなほ保育園の卒園生らが、自作のアイヌ衣装をまとい、アイヌ伝統の踊りを舞った。

 沖縄とアイヌの文化交流が続けられてきた一方で、アイヌ民族を巡る発言が法務局から人権侵犯認定を受けた杉田水脈衆院議員が自身のX(旧ツイッター)で、差別を正当化する投稿を繰り返し物議をかもしている。

 高橋さんは「これほど世の中が変わっても、そういう気持ちを抱く人がいるのが信じられない」と表情を曇らせ、「争いではなく、人と人がつながれる文化の力を信じたい」と会場に掲げられた「万国津梁」の旗を見つめた。

 (安里洋輔)