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原爆写真 「世界の記憶」候補 政府推薦 ユネスコ、25年に審査 家康ゆかりの聖典も


原爆写真 「世界の記憶」候補 政府推薦 ユネスコ、25年に審査 家康ゆかりの聖典も 臨時救護所に収容された負傷者=1945年8月9日(川原四儀氏撮影、広島平和記念資料館所蔵)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は28日、歴史的に重要な文書や絵画などを保護する国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」の候補として、原爆投下後の広島の惨状を撮影した「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」の推薦を決めた。2021年に推薦されたが23年のユネスコ執行委員会で登録が見送られた徳川家康ゆかりの「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」も再推薦する。原爆投下から80年となる25年の委員会で登録可否が審査される見通し。原爆関連が登録されれば初めてとなる。
 写真と映像は米軍が原爆を投下した45年8月6日から同年末までの写真1532枚と動画2本。広島市と中国新聞社、朝日新聞社、毎日新聞社、中国放送、NHKが推薦を求めた。
 写真は爆心地近くで撮ったきのこ雲や負傷者、壊滅した市街地の様子を、市民や新聞社と同盟通信社(共同通信社などの前身)のカメラマン、陸軍船舶司令部写真班が撮影した。動画のうち1本はNHKが収蔵。もう1本は中国放送が取材や番組制作に活用し、現在は国立映画アーカイブで保存されている。
 東京都港区の増上寺にある仏教聖典は、家康が集めた約1万2千点からなる。仏教研究の基礎となる貴重な史料として国の重要文化財に指定されている。前回は「浄土宗大本山増上寺三大蔵」として推薦された。
 世界の記憶の審査は2年に1回で、1国から2件まで推薦できる。今回は5件が公募に応じ、文部科学省の専門家委員会が2件を選んだ。原爆関連では被爆後に12歳で亡くなった佐々木禎子さんが手がけた折り鶴などの遺品と、被爆体験を記した作家原民喜の手帳など2件も政府に推薦を求めたが選ばれなかった。
爆心地から290メートルの市街地。奥右端には現在の原爆ドームである広島県産業奨励館が見える=1945年8月9日(国平幸男氏撮影、毎日新聞社所有)