トルコやイラクなどの国々に分断され、「国を持たない民族」と呼ばれるクルド人の文化にほれ込み、私費を投じて民族音楽のコンサートツアーを開催した。「多くの人に伝えたいし、何より私がクルドの全部を知りたい」と「推し活」に情熱を燃やす。
2018年、旅行先のトルコでクルド人の家庭に滞在した。長年母語の使用を禁じられ、話者が減っていると知り「彼らの言葉を話したい」と決意。渡航を繰り返し「いろんな家庭に潜り込んで」衣食住を共にした。
クルド人の友人から弦楽器サズを贈られたのを機に、民族音楽にものめり込んだ。勇ましい兵士、盛大な結婚式、豊かな自然―。言葉や文化を奪われる恐怖にさらされながら歌い継がれてきた物語に魅了され、現地で民謡の手ほどきを受けた。
10月、友人の演奏家をトルコから招き、埼玉、広島など4会場を回った。集客に苦戦し「見切り発車で大赤字。でも趣味だから」と屈託なく笑う。悲哀に満ちた歌声に心を震わせ、涙を流す観客の姿に「次につながるはず」と手応えを得た。
在日クルド人が多く住む埼玉県川口市の会場ではヘイトデモが起きた。「一人一人の顔や名前を知れば『帰れ』なんて絶対に言えない。この国は本当に生きづらい」
クルド語でユーチューブ配信も始め、クルド人の間では知られた存在に。自身が経営する東京の宿泊施設へあいさつに訪れる人もいるという。「憧れに少しでも近づきたい」と思いは尽きない。兵庫県出身の40歳。
有料
クルド民族音楽のコンサートを開催した 上田(うえだ)恵利加(えりか)さん/豊かな文化 伝えたい
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琉球新報朝刊
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