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県女性の翼~ベトナム研修報告~(下)/安里洋子(与那原町)/平和を未来につなぐこと


県女性の翼~ベトナム研修報告~(下)/安里洋子(与那原町)/平和を未来につなぐこと 女性の翼・安里洋子
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 今回の研修の地は私の幼少期に地上戦が行われ、その戦場に日常的に目にしていた米兵や戦闘機がこの沖縄から飛び立っていることを聞き、複雑な気持ちを抱いていたベトナムです。戦後48年を経て今、ベトナムは暮らしや経済、各分野で復興し発展を遂げ活気がありました。沖縄に近い気候と人々の笑顔、まなざし、賢明さには親しみを感じ、特に医療、女性の社会進出、産業、教育について多くのことを学ぶ機会となりました。
 HUNGVUONG病院は人間の生命誕生の前後のケアをトータル的に支援する国立の産婦人科病院です。母親の疾患やメンタルを含めて各種の専門職がフォローしています。さらにアロマやマッサージなどの新しいケアを積極的に取り入れていること、緊急時対応スキルなど親への子育て教育も意識的に行われ、常によりよい支援を追求する姿勢を感じました。また、未熟児が多いという課題には母乳を重視し、母乳銀行の仕組みをつくり、実践につなげる専門職の強い使命感と行動力に感動しました。病院で見聞した内容は助産師の職能にも伝達し、共有したいと思います。
 ベトナム女性連合は女性の実態や課題を把握し、人々の身近な地域で多様な側面から体系的に女性を支援しており、資金については国の財源だけに頼らず企業からの協賛金や寄付を活用しているなど、今後の活動のヒントになる貴重なお話でした。リン氏の「地域で困っている人の存在を伝えるように頑張っていきたい」との最後の言葉は潜在化し、諦めてしまっている生きにくさの諸問題を表面化する意義や課題解決に向けた活動が必要なのだとのメッセージとして伝わってきました。
 戦争証跡博物館では南ベトナム解放民族戦線で戦った女性からお話を聞くことができました。「戦争当時、学生で何も分からなかった。先輩たちを見て家族や伝統を守るために必死であった、意志・愛国を超えて戦った」と話されていたことが印象に残っています。戦争が起きれば戦うしかない、戦争は悲惨である、戦争を起こさない努力が必要であることを改めて感じました。戦争証跡博物館やベトナム女性博物館は戦争の悲惨さや実態を伝えています。そこから、未来につなぐためにどの視点で何を伝えるのか、伝え方が大事だと思います。かけがえのない日常は全て平和があってこそ、何より平和が大事であることを実感として再確認することができました。
 学んだことをどうとらえ、行動化して、未来につなぐのか私の大きな課題となりました。各分野で活躍している女性の翼の皆さんと考え、活動していくことを通して実践すべきことを見つけていきたいと思います。この研修が始まりであり、40期の皆さんとの出会いを大切に、そして本研修に感謝です。