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核廃絶「米国市民にも責任」/対話と連帯呼びかける医師


核廃絶「米国市民にも責任」/対話と連帯呼びかける医師 核兵器禁止条約締約国会議のサイドイベントで話す朝長万左男さん=11月27日、米ニューヨークの国連本部
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ニューヨーク共同=調星太】1日に閉幕した核兵器禁止条約の第2回締約国会議に参加した長崎県被爆者手帳友の会会長朝長万左男さん(80)は、被爆医師として国際舞台で「核の非人道性」を訴えてきた。会議に先立ち、核大国・米国の市民と対話するキャラバンを実施。被爆の実相とともに「核なき世界の実現には、米国市民にも責任がある」と伝え、停滞する核軍縮の機運を高めようと奮闘を続けている。
 「被爆者たちは今もなお、原爆放射線によって命を落としている。(核廃絶に向け)世界の市民社会は今、連帯するために動かなければならない」。11月27日、朝長さんは締約国会議のサイドイベントで呼びかけた。
 長崎の爆心地から約2・5キロの自宅で被爆。高校生の時、同世代の被爆者に白血病患者が増えたことに疑問を感じ、医学の道へ。原爆後障害の研究を続け、核禁止条約成立の礎石となった国際会議でも、放射線の人体への影響を告発した。
 11月上旬から約2週間かけて米地方都市を巡ったキャラバンでは、計約20の集会を開催。被爆者が高齢化する中で、「最後のメッセージ」を届ける覚悟だった。米国では原爆投下によって戦争が早く終結したとの考えが根強い。厳しい意見が出ることも覚悟していた。
 「瞬間的に浴びた放射線の影響がなぜ続くのか」「被爆者の子ども世代への影響は」。質問が相次ぎ、被爆者の話に涙を流す人の姿が見られた集会も。キャラバンの成果の分析には時間がかかるが、共に世界の反核運動をリードしようという呼びかけに、「賛同は多かったと感じた」。
 旅の終盤、「核兵器時代を始めた米国市民の責任」を強調した。人の知恵は核時代を切り開いたが、核兵器をなくせていない。人体にどういう影響をもたらすかを突き付け、核保有国の市民にもリスクがあり、廃絶に向けて政府を動かす必要がある。「それが医者として運動を続けるモチベーションだ」
 締約国会議は核廃絶への決意を改めて示す政治宣言を採択し、閉幕した。「非人道性をとことん追及する状況が生まれている」と評価する一方、会議に参加しなかった核保有国を取り込むため「どういう交渉をしているか示されなかった」と不満もある。「敵視だけでは進歩はない。保有国との対話を実現し、会議に出席してもらうことが大事だ」と課題を挙げた。